ガーデン ご紹介

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5 Rubislaw Den North
               2010年6月5日 訪問  水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。

今日もガーデン・スキーム(Scotland’s Gardens Scheme SGS)のガーデンを予約してある。アバディーンの街中にあるガーデンだ。 大都市は迷子になるから避けたいところだが、SGSのホームページに掲載されている写真を見ると外せなくなる。電話で予約すると快諾だ。
どうせ街に入るなら市内観光を兼ねてドライクリーニング店を探そうと準備してきた。市内に入るがパーキングが見つからない。 ようやく見つけたと思ったら工事中でお休みだ。中小の都市であれば、路上のパーキングもあるが、ここアバディーン中心街は路上駐車は一切不可だ。 2周りほどしたが見つからず断念する。
SGSの"5 Rubislaw Den North"に向かう。"5 Rubislaw Den North"は住所そのものなのだ。ナビ子ちゃんのガイドで近くに居ることは間違いないが見つからない。 通行中の女性に尋ねると大通りではなく横道を入った辺りだと言う。教わった辺りを探すとようやく見つかった。だから大都市は嫌なのだ。
この辺りは素晴らしい建物が立ち並ぶ高級住宅街だ。"5 Rubislaw Den North"もフロントガーデンはさほどの広さではないが大木が繁る。 立派なカントリーハウスは呼び鈴を押すのさえ憚られる存在感だ。呼び鈴を押して待つこと暫し、現れたのは魔女ならぬ魔男?だ。 長身で猫背の老人で白髪、白皙、鉤鼻だ。おまけに長い杖をついている。正に魔女の男版だ(写真下左)。「良く来た。入りなさい」と招き入れられるが、 入ったらこのまま帰れないのではないかと不安がよぎる。
入った部屋の広さに仰天する。家具調度や装飾品もさぞかし・・・と思われる佇まいだ。しばし見惚れる。「誰もいないからお茶は出ないよ」とのことだ。 どうやら一人住まいのようだ。「以前は家も敷地も倍あったが半分手放した」と言う。そう言えば、この家を探している時、 隣の住所が”5−1”、”5−2”となっていて、このお宅が”5”だったのだ。半分を2軒で買ったのだろう。 東京のどこかの高級住宅街も同じような事情だと聞いたことがある。こちらのお宅も相続税が掛ったのだろうか。
老人の家自慢はなかなか終わらない。広い窓から見えるガーデンを指して「素晴らしいガーデンを見せてください」と促しガーデンに移る。
因みに、この老人の名はDr. Thomas Smith、アバディーン大学の物理学の教授をされていたようだ。品性の良さを滲ませるが、かなりの高齢と見受ける。

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芝の広場の木陰に椅子とテーブルがあり、テーブルには何冊もの本が置いてあり、椅子にはクロスが掛けられている。我々のために用意してくれたのだろう。 嬉しいことだ。まずはそこに座らされ、本の説明だ。このガーデンが紹介された本とTomがデザインしたガーデンが載っている本だと言う。 ガーデン・デザインが趣味で幾つか他所のガーデンもデザインしたらしい。自分のガーデンについてのコンセプトをたっぷり拝聴する。
「一巡り案内しよう。杖は突いているが、歩くのは早いからしっかり着いてこい」と先に立ち、ガイドツアーが始まる。ハウス前からの眺め。 木陰に椅子とテーブルが見える。樹木の植栽が見事だ(写真下左)。ハウス周辺も植物で覆われている。壁から屋根にクライミングする植物、緑鮮やかなヘッジ、 宿根草の絶妙なカラースキム、どこをとっても素晴らしい(写真下中2枚)。石の周りのグラス類の多様さにも驚く。

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自慢の場所に来るとにやりと笑いながら説明が始まる。写真下左は右下がりにカットされたトピアリーと右上がりにカットされたヘッジがデザインの妙だ。
2枚目はスネークするヘッジが何やら意味しているようだが面白いデザインだ。「あなたのガーデンには哲学を感じる」と伝えると「分かるか」とご機嫌だ。 「ガーデンデザインには植物だけでなく形(Form)、科学(Science)、哲学(Philosophy)が重要だ」と情熱的に語る。
右2枚は12本のポプラを円形に植え込んだ庭で"sky telescope"と呼ぶ。上を見上げれば確かに”空の望遠鏡”だ。見上げた円空から気が下りて来て、 下にある金属製の球形のオーナメントに溜まるのだという。脇の大きな槌で叩くと良い音がして、気が伝わってくるのだそうだ。これは哲学だ。難解だ。

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ここには沢山の珍しい樹木や外来の樹木が取り入れられていることも自慢らしい。写真下左の中央に写っている丸く刈り込んだ木を自慢する。 日本では当たり前に見られる刈り込みだが、"cloud-pruned trees"と呼ばれ珍しい技法なのだという。「他にも日本から来たものがある」と言って見せてくれたのが、 ウラシマソウ(左から2枚目)とモミジ類(中)だ。針葉樹(右から2枚目)やボタン(右)なども外来種になる。
パークヘッド・ハウス(30日訪問)のMadeleineもカークサイド・オブ・ロッホティー(3日訪問)のIreneも推薦してくれたが、 Tomも同じように"Inverewe Garden"が素晴らしいと薦めてくれた。「この後周遊して旅の後半で訪問する予定だ」と応えると満足げだ。

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半分を手放したと言っても1エーカー(4000坪)の庭だ。家の裏手に細長く伸びている。それもなだらかな登り斜面だ。 両脇のお宅も同じようにバックヤードだし、庭の外れから先は街中とは信じられないことに森が続いているのだ。
一隅に珍しいボーダーがあった。スギナモ(mare’s tail)やシダ(fern)など原始の植物から現代の花まで植物の進化を時代を追って植え込んである。 この植物からこの植物の間は何万年とか、この1mが1億年に当たるだとか説明され神妙にうなづく。これは科学だ。

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極めて厚い植栽のスロープを蛇行する通路にしたがって進む。随所にTomの哲学がちりばめられている。
写真下左はアインシュタインの相対性理論の方程式のようだ。色々説明してくれたが、理解出来ない。物理学者として何かを表現しているようだ。 次の丸い平板も何か文字が刻まれており、聖書の言葉だと言っているように理解したが定かではない。 "Laboratory Spirit"とも"Monument of Intelligence"とも言っていた。研究心や知性を大切にしろということだろう。
次はスネークするヘッジの終点にあったのだがこれも良く分からない。右の石に刻まれた文字"Sub specie aeternitatis"はラテン語らしい。
物理学の教授さんらしい思い入れと遊び心に溢れたガーデンと理解する。ガーデンとはガーデナー自身がそこで如何に楽しめるかが大切だと再認識する。

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ガーデンには幾つか椅子が置いてあるが、左の椅子は座っても大丈夫だろうか? 2枚目の岩の椅子は大丈夫だ。
右2枚の写真のパーゴラとヘッジの模様がGoogle マップではっきり見える。 ポストコードの"AB15 4AL"を入力すると表示される地図の赤いAのマークの家から右に4軒目の家が"5 Rubislaw Den North"だ。ご興味ある方はお試しあれ。
Admissionsは7ポンドだ。決して安くはないが、これもDr. Tomのプライドなのだろう。15ポンドを渡しお暇する。"Inverewe Garden"を訪問するようにとの念押しがある。

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Information
 Address  5 Rubislaw Den North, Aberdeenshire AB15 4AL
 Telephone  01224 317345
 Web Site  -

オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。

「旅行記」もご覧ください。

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