Dunnottar Castle ダノッター城
今日の最初の訪問地はダノッター城だ。5年前にも訪れたが、その後の訪問地"St Andrews Old Course"へ急ぐあまり、遠くから眺めてそれで良しとしてしまった城だ。
ダノッター城の情報を見ると"stunning"とか"dramatic"、"unforgettable"、"evocative"などの形容詞が踊っている。今回こそはと心に秘めてやってきた。
パーキングから500mほどの取りつき道路の両脇は野の花が咲き乱れている。写真を撮ろうと近づくと、同じようにカメラを構えていた婦人が
「気を付けて。触っちゃダメ」と叫ぶ。その時には既に遅かった。花に触れた膝のあたりに鋭い痛みとしびれを感じる。ピンクの花はスコットランドの国花あざみだったのだ。
「触っちゃったのね。でも、数時間で元に戻るわよ」との優しい言葉だ。白い花はどこでもお馴染みのセリ科の花だ。妻は「オルラヤがこんなに」と羨ましがっている。
城は北海に突き出た高さ50mという断崖絶壁の上に建っている。城への狭い道は一旦海面近くまで下り、再び登らなければならない。
イギリスに関するエッセーで有名なリンボー先生は「ホルムヘッドの謎」でこの城を”海岸の断崖絶壁の上に、ダノッター城という、これまた不吉極まりない姿の、
無残に崩れた廃墟の城がある。”と表現しているが、それ程寂れた感じはしない。リンボー先生が訪れたのは雨模様の日だった所為もあろう。
この地には5世紀頃キリスト教をピクト人に伝道するため訪れた伝道師によりスコットランドで最初の教会が建てられたという。
そして、7世紀頃にはバイキングから守るための砦に変わったのだ。"dun"はピクト語で”砦”を意味するのだという。
岩の上は外から眺めた印象よりずっと広く感じる。3エーカー(3700坪)もあるという。そこに14世紀から17世紀に建てられた11の建物の廃墟がある。
写真上右が本丸(The Keep)だ。15世紀前半の建物だが保存状況が良く2階に上がれる。2階からの眺望が下右3枚の写真だ。右から南側の海岸線(Old Hall Bay)、
入口(Gateway)と海岸(Castle Haven)、中庭(Courtyard)だ。北海を渡ってくる風は冷涼で心地よい。
ウィリアムウォーレス(William Wallace)やメアリー女王(Mary Queen of Scots stayed)の2度にわたる訪問など城は繁栄する。17世紀になるとより多くの人を招くために
"The 17th Century Ranges"と呼ばれる区域(Range)が増築される。写真上左から2枚目の左に写る建物だ。先ず"West Range"と呼ばれる区域(写真下左)が建てられ、
順次"Chapei"、" North Range"(写真下左から2枚目)、"East Range"が建てられ、長方形の中庭を囲む施設が完成する。
写真下右から2枚目は中庭の貯水池(Cistern)と兵舎(Barracks)だ。右は鍛冶屋の仕事場(Smithy)で馬の蹄鉄や銃や大砲の弾丸など重要な仕事をしていた。
1649年に父のチャールズ1世(Charles T)を清教徒革命(Puritan Revolution)の指導者クロムウェルにより処刑されたチャールズ2世(Charles U)は、
1651年にスクーン宮殿(6月30日訪問)でスコットランド王として戴冠したが、その際使用したスコットランドの誉れ(Honours of Scotland)といわれる王冠と剣と笏
(Scottish Crown Jewels)をエジンバラ城(5月26日訪問)に戻す間もなく、クロムウェルの強力な軍隊に敗れる。そこでスコットランドの誉れをダノッター城のマリスカル伯爵
(Earl Marischal)に託し、フランスに逃れてしまう。ダノッター城の70名の駐屯兵はクロムウェル軍の攻撃に8ヶ月耐えた後降伏するが、
スコットランドの誉れは密かに持ち出されて難を逃れた。そして、1660年チャールズ2世はロンドンに戻り、王政復古が果たされると、スコットランドの誉れも
エジンバラ城に戻されたのだという。
歴史にはあまり興味のない私だが、スコットランドを巡っていると否が応でも歴史の中に誘い込まれてしまう。
写真下左はMain Entranceで4つの丸い穴は銃眼(quad gun-port)なのだ。中央はWaterton's Lodgingと呼ばれ、伯爵の息子夫婦のために建てられた16世紀の建物だ。
右は1km程北にあるBlack Hillの頂上に立つ戦争記念碑(War Memorial)だ。
近くのファームでPYO(Pick Your Own)してきたのだろう、2種類のベリーを遺跡の石に座り食べていた若い女性カップルに写真撮影を頼まれる。長閑な光景だ。
そして、ここは1990年の映画"Hamlet"のロケ地ともなったのだ。断崖にはパフィンも見られるということで目を凝らして探したが、
残念ながらカモメやアホウドリのような海鳥しか見られない。リンボー先生の言う不吉極まりない歴史を秘めたお城だが、今は平和の中にある。永遠にと願う。
Address | Stonehaven, Aberdeenshire AB39 2TL |
Telephone | 01569 762173 |
Web Site | Dunnottar Castle |
オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは
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