第27日 7月12日(火) 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
Riverside Farm
今朝は珍しくミスティーなお天気だ。久々の雨模様は身体を休めろという天のお告げか…。幸いNorth Yorkshire Moors Railway
のPickering始発は10時15分だ。朝食後もゆっくりとホステスのJaneと話したり、部屋で寛ぐ。
写真のソーセージが少し欠けている。写真を撮り忘れてかぶりついたのだ。食欲はまだまだ充分ある。残り5日、
何とか乗り切れるだろう。
North Yorkshire Moors Railway
North Yorkshire Moors Railway(NYMR)でPickeringとGrosmont
の間を往復する。保存鉄道としてはイギリス第2の長さ29kmを1時間余りで走る。Dinner Trainなど様々なサービスが
用意されていることをホームページで知りTimetableを調べたが、残念ながら今日は運行されていない曜日だ。
Janeからくれぐれも街の駐車場に入れないでNYMR専用パーキングに入れるよう指示があった。案内通り駅を通り過ぎた
大分先に入り口がある。既にかなりに車が停められている。
既に列車は入線している。優美な跨線橋を渡ってプラットホームへ、ホームのハンギングからペチュニアが溢れ出している。
蒸気機関車は盛んに蒸気を噴出し、いかにも気合が入っている。大きな動輪が頼もしい。
力強く発進。線路脇にも綺麗な花が咲いている。早速、車内販売でコーヒーをいただく。心地良い振動と懐かしい石炭の匂いを 楽しみつつNewton Daleを進む。いつの間にかお天気は快晴だ。最初の駅Levishamを過ぎ、小さな川を右に左に眺めつつ、 時には森林、時には牛やヒツジの放牧場を縫いながら進む。占めた車両は一番後ろだ。カーブの多い路線だと聞く、 となればカーブでの撮影アングルは後ろの車両が最適だ。客車は椅子もテーブルも固定されておらず、只、 床に置かれているだけだ。あっという間にGrosmontに着いた。大きな声で発車の合図を掛け、 車内検札も陽気に声を掛けて廻る車掌さんと記念写真を撮る。
蒸気機関車は見事に磨き上げられ写真を取る姿が鏡のように写ってしまう。30分足らずで折り返しの便が出発する。
GrosmontとGoathlandの間にイギリスの鉄道で最も急勾配の箇所があるという。車両が大きいのでさほどには感じない。
1つ目の停車駅がハリー・ポッターの映画や人気テレビドラマのロケ地となったGoathland駅だ。ホームは人でごった返している。
記念写真を撮った車掌が検札に来て驚いた顔をする。”もう帰るのか”と。神風かっとび急ぎ旅の身でございますゆえ、お赦しを。
Moorsではヒースが所々紫に色付き始めている。この斜面全体が紫に染まった様はいかばかりだろう。その季節にもう一度
ここに戻ってこよう。
Pickeringに着くと機関車の機回し作業が行われる。今度は後ろ向きで牽引して行くのだ。この力強さ・剛直さが堪らない。
何故かNYMRのホームページはもう1つ存在する。
North Yorkshire Moors
さて、次はNorth Yorkshire Moorsの東海岸沿いをドライブする。ScarboroughからWhitbyの景色が良かったとの情報を読者から
いただいた。Scarboroughの街にも色々情報はあるが、カントリーサイド優先としパスする。A170からA171に入り
暫し行くと、North Yorkshire Moorsに入る。遠く右手に海を見たり、豊かな森を走った思えば一面のヒースに変わる。
穏やかなアップダウンと緩やかなカーブを繰り返す道路の両脇のヒースがポツポツと紫になっている。
ほら!あそこ、こっちも凄いと歓声を上げてのドライブだ。
パーキングを見つけ、暫し散策する。パブリック・フットパスのスタイル(柵を乗り越えるための踏み台)を乗り越え
ヒースに入る。辺りは一面紫だ。時期をずらした作戦は成功だが、これで3部咲き位だろう。満開になったらどんなだろうか。
また来ようとの思いは募る。
パーキングにジャケット・ポテト屋さんが店を出している。屋台の割りにメニューは豊富だ。バーガーも中味を選べる。
ソーセージで頼んだら、目玉焼きも挟んでくれた。体つきの割に丁寧な仕事をする男だ。1つを2人で食べるといたら
ナイフで切ってくれた。大きなカップのミルクティーと合う。心地良い風の中、おいしいランチとなった。
大きなトレーラーが2台入ってきた。おなじみの運転手なのだろう。急に賑やかになった。太い腕のタトゥーがちょっと怖い。
Whitby Abbey
Whitby Abbeyは北海を見下ろす高台に立つ
美しく大きな廃墟の修道院だ。その起源は7世紀に遡るという。今残っている建物は13世紀に再建されたものらしい。
街からだと長い階段を登るようだが、私達は車で高台まで登る。English Heritageの管理である。緑の芝と青い空の中に
蜂蜜色の修道院が立つ。廃墟と化したとはいえ、その美麗さは損なわれていない。柱や窓枠に見える建築美は風格をとどめる。
Whitbyは綺麗な砂浜を持つ港町だ。キャプテン・クックの博物館はここにもあるようだ。
Rievaulx(Abbey, Terrace & Temples)
Rievaulx Abbeyは
深い谷の底にある。B1257から細い急な坂を下った先に忽然と現れた姿は物悲しくも見える。それはこのシチュエーション
によるものだろう。基本的には東西に建てられる修道院だが南北に建てられているという。
Abbeyへの下り口にRievaulx Terrace & Templesがある。そのテラスから眺めたRievaulx Abbeyが壮麗にして神秘的な姿である。(写真下中・右)
Rievaulx Terrace & Temples
はナショナル・トラスト管理のガーデンだ。長いテラスの両脇に寺院風建物(写真下左)と神殿風建物(写真下右)が配されている。
テラスの一方はRievaulx Abbeyの姿や、遠くの丘のパッチワークのように彩られた眺めがみられる芝の広場が伸びる。
裸足で両手に靴を下げた女性が二人歩いてくる。”気持ちが良いわよ”と笑顔で去って行く。
もう一方は林の中の散策を楽しむウッドランドだ。テラスの脇やウッドランドには野の花が見られる。
North Yorkshire Moors
今度はNorth Yorkshire Moorsの南西部のドライブだ。B1257からUnclassified道路に入り
Byland Abbeyに到着。
ここも恐ろしく古そうだ。修理中のその姿は痛々しくもある。このAbbeyは最初は先ほど訪問したRievaulx Abbeyの近くの
Old Bylandという村に建てられようとしたが、Rievaulx Abbeyの鐘の音が聞こえるので、ここByland Abbeyに変更したのだという。
おおらかと言うのか、いい加減というのか面白い話だ。RievaulxもBylandも12世紀に遡るという。
Byland Abbeyから北東5kmにある
Kilburn White Horseを目指す。
小さな村を通り抜け、Kilburn村を越えた辺りで行く手に意外と大きなWhite Horseが現れる。長さ90m、高さ70mという。
1857年 に造られた(描かれた?)。04年に訪れたCherhillのWhite Horseに較べると素朴と言うのか稚拙と言うのか?
Kilburの村外れの家並みのフロント・ガーデンの手入れが良い。特にこのお宅には脱帽・ため息だ。バック・ヤードは
いかばかりだろう。想像するだけで楽しくなる。こんなフラワー・ガーデンが私の理想とするガーデンだ。
急坂を上りWhite Horseへの登り口のパーキングを横目に通り過ぎ、一丘越えた所に
Gliding Clubがあった。看板のデザインが面白い。
Sutton Bank
A170に出て左折すれば間もなく
Sutton Bank
のパーキングだ。地図上にView Pointのマークがあるし、サイトの情報でも素晴らしい眺望だとのことであったが、驚くには
あたらない。高い山のないイギリスでは150メートルの崖上からの眺めは貴重なのだろうが、山国の日本人からすると
大したことはない。とはいえこの眺めだ。左手(南)には深い森があり、その端が断崖絶壁(Roulston Scar)だ。
この上にさっきのグライダー・クラブがあるのだろう。正面から右手(西から北)には手前のGormire Lakeの先に、
美しいのどかな田園風景が広がる。ここからの視界は30マイルに及ぶといわれるが、今は夕霞でそこまではない。
Visitor Centreは既に閉まっている。小さなオブジェが目を惹いた。ここからView Pointまでは少し距離があり、
だいぶ迷った。
North Yorkshire Moors
最後にNorth Yorkshire Moorsの中央部をドライブする。Sutton BankからA170を東進、Kirkbymoorsideの少し先で左折、
Unclassified道路を北上するとHutton-le-Holeという絵に描いたような可愛い村に出合う(写真下左)。右手のパブの
屋外のテーブルは夕食を楽しむ人で溢れている。左手の芝の斜面には白い手すりが付いた遊歩道がある。
この村も泊まってみる値打ちがありそうだ。
村の真ん中の通りをヒツジがのんびり横断して行く。目の前の道路で子ヒツジが母ヒツジのおっぱいを飲み始め、
終わるまで待ち惚けしていたら、パブの客から笑われた。のどかな光景だ。
村を通り抜けるとその先15kmほどはひたすらMoorだ。高い木とてない、一面ヒースに覆われたなだらかな丘が続く。
紫に染まったヒースに思わず停車し、見惚れているとヒースの中からヒツジが現れた。人を恐れる様子はない。幽玄の世界だ。
路傍にNational ParkのSign Postを見付ける。こんな発見が嬉しい。
Hutton-le-Holeでも見たように、ヒツジが道路を横断する光景は微笑ましく感じるのだが、悲しい現実がある。
下の写真のようなWarning signsが至る所に置かれているのだが、守られないために悲しい結末になるようだ。
昨年150頭のヒツジが殺されたという。ON ROADがこの15kmの道路だけとは思えないが、150頭は少なくない数だ。
ぶつけた車も運転手の心も痛んだことだろう。心して運転しなければ。
Fox & Hounds Country Inn
North Yorkshire Moorsのドライブを1時間余り楽しんで、Sinningtonに戻ったのは19時30分だ。今夜も食事は
Fox & Hounds Country Innで取ることにし、直接立ち寄る。今日はレストランのほうに座る。
メニューは忘れたが、ご覧のとおりの料理だ。美味しさも伝わる盛り付けではないだろうか。
Riverside Farm
B&Bに帰ると既に21時だが、BillとJaneはダイニングの外のテーブルで食事を楽しんでいる。”ただいま”を言うと
二人とも立ってきておしゃべりが始まった。Billの仕事はFarmといっても動物を飼うのではなく、自分の牧草地の牧草を
販売するのだと言う。牧草地でお馴染みの牧草を丸く巻いてビニールに包んだものをロール・ベールサイレージというが、
これを立方体に包む方法を考え出したのがBillだと言う。
もう一つの仕事はヘリコプターを使って農地の水や肥料・農薬の散布をする仕事だと言う。
遠くはコーンウォールから依頼が入ると言う。(遠くのヘリをズームで取ったので手振れしている。)
ナショナル・ガーデン・スキムの会員でもあるし、補導員などのボランティアも色々やっているようだが、全部は聞き取れない。
Janeが誇らしげに言うことには、立方体ベールサイレージの開発を始め色々な活動が認められ、
明後日木曜日には女王陛下に謁見するのだと言う。素晴らしいことだ。こちらも嬉しくなる。
このB&Bは専用バストイレが別室になっているし、部屋のドアーに鍵がない。正に子供が独立し空いた部屋を貸す、
B&Bの原点のような姿だ。
ヨーク編Uも今日で終了だ。ヨークの情報の多くは NI's Websiteからいただいた。 あれこれ検索したがヨークに関する情報はこのサイトがナンバー・ワンと断言して憚らない。 ヨークにご興味がある方にはお薦めだ。
”Topic” バラ窓 Rose Window Topic一覧はこちらへどうぞ
バラ窓が好きだ。初めての海外旅行は1986年のことだから、もう20年も前のことになる。会社のインセンティブ旅行だった。
ロンドン・ミラノ・パリの提携会社を6泊8日で周る旅だった。最も印象に残ったものの一つがパリのノートルダム寺院の
ステンドグラス、とりわけ、ばら窓の美しさ、荘厳さだ。身震いするような畏敬の念を抱いたものだ。
ステンドグラスは元来キリスト教布教のため造られたもののようだ。聖書を大量に印刷する技術もなく、文字の読めない人が
大半であった時代、天井や壁に描いた宗教画で民衆に説いた。そして彫刻やステンドグラスへと広がっていったのだ。
また、建築様式も大きく関係していたようだ。壁で天井を支えるロマネスク様式の時代は大きな窓を開けられなかったが、
ゴシック様式になり柱で天井を支え壁に大きな窓を作れるようになり、ステンドグラスが広まったという。
円形のステンドグラスがばら窓と言われるのはその形がバラの花に似ているからに他ならない。天井近くにあるバラ窓から
射し込む光は神の光であり敬虔な当時の民衆に希望を与えたことだろう。
05年の旅は多くのCathedralやAbbeyを訪ねた。廃墟が多かったからステンドグラスはなかったものの、ばら窓の形の残った
壁は同じように私の心を惹きつけた。宗教心の希薄な私だがこれらの前では瞑目を禁じえない。
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この他にChester Cathedral、Fountain Abbey、St Andrews Cathedralなども訪れているが
ばら窓は見当たらなかった。見落としたことはないと確信するが…。
それにつけても宗教の力の大きさを感じるが、逆にその怖さをも思わざるを得ない。
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