第14日 6月29日(水) 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
Ees Wyke Country House
昨夜は遅くまで3階の屋根裏部屋の窓から白夜の暮れ行く空を眺めてしまった。その時には思いも寄らなかった雨が降っている。
それも土砂降りだ。今日は楽しみにしてきたWrynose Pass - Hardknott Passのドライブの予定だがこの雨では危険だ。
予定変更も覚悟したが、アーリー・モーニング・ティーを楽しんでいるうちに小降りとなり、8時過ぎには上がった。
晴れ男・晴れ女を再確認。
足元は悪いが庭を散策。モンキー・パズル・ツリーが大きく成長していた。4年前にはわずかに見上げる程度だったと
記憶しているが、倍くらいに成長したように思う。驚きだ。(成長の遅い木との情報もある。記憶違いかもしれない。
それにつけても、01年の写真を失ったのが悔やまれる。)
南斜面から見るCountry Houseの全景だ。ダイニングの窓のフレームが美しい。玄関の円形ポーチがEes Wykeの売りでもある。
ハンギングバスケットも調和している。この庭から湖岸までの散策路は口蹄疫以来閉鎖されたままだ。
入り口のおしゃれな表札からのアングルは、膝と肘を露で濡らしながらの傑作と思うのだが…いかが?
昨夜あれだけいただいても空くものは空く。8時30分を待ち兼ねての朝食だ。昨夜と同じ席だ。フランス人御夫妻も カジュアルな出で立ちで明るく微笑み掛けてくれる。気持ちが良い。昨夜のディナーは2組だけだったが、 朝食は他に2組のカップルが一緒だ。例によりフルーツとジュース(シリアルはパス)に続き、フルイングリッシュを いただく。ソーセージがリングになっている。揚げパンも付いてボリューム満点だ。
The Old Barnで洗濯して以来6日目、洗濯物が溜まってきた。食後、洗濯機を借用できないか聞いてみたところ、 Margaretが”洗っておくから持っていらっしゃい”と言ってくれる。”下着類だから自分でする”と言ってみたが、 ”こちらでやるから出かける前にここに出しておきなさい”ということで、お言葉に甘える。ありがたいことだ。
Wrynose Pass - Hardknott Pass
この旅のプランニングの中で湖水地方再訪の決め手はEes Wyke Country HouseとWrynose Pass - Hardknott Passのドライブに
尽きる。あの山岳ドライブの興奮はその後のドライブでは経験成し得ていない。4年前に、また必ずと心に誓ったドライブだ。
今年はその後のサイト検索で得た
情報から更にバージョンアップしたドライブ計画となった。4年前はA593からUnclassifiedに入りLittle Langdaleを
経由してWrynose Passに到ったが、今年はB5343でGreat Langdaleまで行き、Unclassifiedを下りWrynose Passに到る計画だ。
同じUnclassified Roadでも地図上の違いがある。片や実線、片や破線だ。破線の方は凡例に"road with passing places"とある。
すなわち、passing places以外は行き違いできない細い道という訳である。だから楽しい。もちろんWrynose PassもHardknott
Passも破線で示されている。その上steep gradient(急坂)を示すくさび印(>)が沢山付いている。嬉しくなる。
地図はWrynose Pass - Hardknott Passの全容を示す。わずか10kmの距離だが、スリルに溢れたスペクタクルが展開する。
地図はMultimap.comから。
A593からB5343に入りElterwater、Chapel Stileという小さな村を通過する。小さな村だが教会やパブがあったり、 ホテルがあったり機能は完備している。見所もあるようだが今日はドライブを楽しみGreat Langdale村に到着。 ここからがUnclassified Roadのドライブだ。幸い路面も乾いた。急坂に急カーブ、カトル・ブリッドありで息つく暇もない。 オッと、道端にヒツジさんだ。朝食後の一休みか、のんびりと寝そべっている。それにしても、のんきな顔ではないか。
あっという間に一丘越えてWrynose Passの入り口に到着。こんなに細い道だったかと疑うほどに細く、驚くほどに真っ直ぐに
(山道と言えば日光いろは坂を思い起こすように、ジグザグに登るイメージだがここでは違うのだ。)伸びた谷間の道駆け上り、
駆け下ればCockley Beckだ。
ここにはWrynose PassとHardknott Passを繋ぐ橋がある。Cockley Beck Bridgeだ。下をRiver Duddonの清流が流れる。
ここでホッと一休みだ。清流で手と顔を洗いストレッチ体操で身体をほぐす。快い緊張感からの開放だ。山岳ドライブの
クライマックスはこれからなのだ。
Cockley Beck Bridgeを渡りHardknott Passに取り掛かる。あの峠は標高もWrynose Passと同じわずか393メートルだが、
直登するからBlind Summitの上を行く天を突くようなスリルだ。
さて、峠を越すと真っ直ぐな下りだ。写真の標識通り25%の下りはつんのめりそうな錯覚を抱く。真っ直ぐとは言ったが、
時にはとんでもないヘアピンカーブも現れる。ハンドル捌きの見せ所だ。Low gear now!? 言われなくとも、
そうせざるを得ないよ〜!
道端には、ワタスゲの群生が見られ、白い綿が美しく風になびいている。そこに案内板があった。
この真っ直ぐなローマン・ロードに沿って、WallとFortがあったようだ。Hadrian's Wallの延長線らしい。それにしても
想像を超えるスケールだ。多くの兵士も駐屯したのだ。2世紀のことらしい。この辺境にこの遺跡、争いの跡だ。
ゆっくり運転の車はこちらが追いつけば、概ねpassing placesで道を譲ってくれるものだが、時にそれに気付かない
ドライバーもいる。そんな時は路肩に停車して少し景色などを楽しんで距離を空け再出発だ。
Ravenglass and Eskdale Railway
Ravenglass and Eskdale Railwayはおとぎの国の
鉄道だ。可愛らしい蒸気機関車に牽かれた小さな客車に乗って、ヒツジや花を愛でながら美しいEskdaleからMiterdaleを
駆け抜けるひと時は童心に返りおとぎの世界に遊ぶ。
そのミニSLのDalegarth Station発は11時30分だ。時間ぎりぎりだ。そう言えば4年前もぎりぎり駆け込んだ。
(相も変らぬ神風かっとび急ぎ旅だ。) ヤレヤレ間に合った。少し寒そうだが一番後ろのトロッコのような客車に陣取る。
時間になったが一向に発車の気配がない。これがイギリスの鉄道らしいところ、決して時刻表通りには走らないものらしい。
慌てることはなかったのだ。一旦降りてDalegarth Stationの記念撮影だ。駅舎の隅のほうまでハンギングバスケットが
吊り下げられている。気持ちが良い。改札口の辺りは遅れて乗り込んでくる人たちで賑わっている。
ようやく出発だ。汽笛の音も高らかに、蒸気を吐き出し煙を上げて小さな機関車が牽引する。石炭の匂いのする風が盛大に
吹きつけ心地良い。最初はかなりの下り坂だ。しばらくすると寒くなってきた。用意のセーターを着込む。
最初の停車駅The Green Stationで大勢のお客さんを乗せ出発すると、石の壁で仕切られた緑豊かな牧草地の中に絵に
描いたような家が現れる。牧草地には牛やこの地方特有のHerdwick Sheepがのんびりと草を食んでいる。遠景の山々もデールの
雰囲気を増す。あの山々の中にイングランドの最高峰Scafell Pike(978メートル)があるはずだが、少し霞んで定かではない。
次の停車駅Irton Road Stationでは対向車と行き違う。お互いに手を振り合って擦れ違う顔は皆純真だ。
駅を出るとジギタリスの群生地を通る。一面ピンクの絨毯を敷いたようだ。道路があるようには見えないが立派な石橋が現れた。
Ravenglass Stationに到着した。7マイル(11.2km)、40分のメルヘンの旅だ。
この鉄道には蒸気機関車が5台あるようだ。名前は"River Irt"、"River Esk"、"River Mite"、"Northern Rock"そして
"Bonnie Dundee"だ。我々を牽引してくれたのはRiver Irtだ(写真下左から2枚目)。ペイントは緑に黒と黄のラインだ。
River Esk(写真下右から2枚目)のペイントは黒を基調だ。写真上左で行き違った機関車がRiver Miteで赤基調のペイントだ。
Northern Rockはダークグリーン、Bonnie Dundeeは黄基調に塗り分けられ、夢があって楽しい。
折り返しの発車時間までRavenglassの街を散策すると右のような光景に出合った。River Eskがアイルランド海に注ぐ
河口付近が引き潮で干上がったようだ。4年前にも寄ったお土産屋さんでショッピング。駅に戻り綺麗に飾られた花々を眺めたり、
ティールームでコーヒーを楽しんだりしてのんびり過ごす。神風かっとび急ぎ旅の中、閑ありだ。
この駅で蒸気機関車はターンテーブルでUターンし、整備をしてから反対側に連結し帰路を牽引するのだ。
写真から分かるように軌道は極めて狭軌だ。15インチ(38センチメートル)しかない。遊園地の電車と変わらない。
Muncaster Castle
Dalegarth Stationに戻り、車内でBettysのドライフルーツケーキやチョコレートでランチとする。次は今行ってきたRavenglassの
Muncaster Castleを目指す。
このサイトも参考に。
しばらくは線路に沿って下り、途中からRiver Eskに沿って左に折れ、狭い谷間の道を走る。
擦れ違いはおろか道路わきのブッシュに車体を擦りながらの運転だ。こんな中での擦れ違いでも本当に気持ち良くバックして
道を譲ってくれる。こちらのお礼に対しても笑顔で軽く会釈を返してくれる。気持ちが良い。良い加減不安になってきた頃、
突然にA595に突き当たり、開けた視界にMuncaster Castleが見えてくる。
深い緑の森の中に威容を誇る。見えていてなかなか到着しない。パーキングに駐車しレセプションから入場しても城の建物までが
また遠い。
城の前庭で丁度'Meet the Birds'というフクロウのショーが始まる時間だ。毎日14時30分から開催されるとのこと、
ラッキーだ。既に大勢のお客さんが並んでいる。待つ間もなく、長髪で髭を蓄えた男が現れ盛んにおしゃべりをする。
聞き取れないものにはうんざりする位しゃべった後、甲高い指笛に誘われ一羽の鷹が森から現れた。Common Buzzard(ノスリ)
という鳥らしい。髭の男の指笛の指示に従い、いろんな場所に移動する。餌に釣られてのこととはいえ、なかなかのものだ。
観客から大きな拍手が飛ぶ。
次に現れたのは世界で一番大きなフクロウだというEuropean Eagle Owlだ。現れた瞬間は凄い迫力を感じさせたが、
飼育員同様太りすぎなのか元々動きが悪いのか、ピリッとしない動きがユーモラスだ。年齢は30歳と聞き驚く。
しかし、二十日鼠をペロリと一飲みのシーンはやり過ぎだ。
最後は白い小型のフクロウのBarn Owl(メンフクロウ)が現れた。お面を付けているように見えるのでこう呼ばれるらしい。
イギリスの記念切手でこのフクロウを見たことがある。同じように飛んで見せ、フィナーレは全員集合の後、
観客の目の前までやって来て見せてくれる。子供達が大喜びだ。
ここにはThe World Owl Centreがあり、世界中のフクロウを見られる。また、The WORLD OWL TRUSTというフクロウの保護団体の
本部もあるという。
ガーデンはウッドランドの石楠花やツツジが呼び物らしいが今はない。紫陽花が見頃の一角があった。
Muncaster Castleは幽霊が出るお城としても知られている。暗くならない内に帰ろ。
Bowness-on-Windermere
A595、A5092、A590、A592と乗り継いで1時間20分、Bowness-on-Windermereにやって来た。
湖水地方で最もポピュラーな街だろう。この街に
The World of Beatrix Potter Attractionがある。
前回はパスしたが、今回は妻が訪れたいと言うのでやって来た。昨日の"Hill Top"と4年前に訪れたHawksheadの"Beatrix
Potter Gallery"と合わせてポター3点セットが揃った。
本で読み思い浮かべた情景がそのまま再現され、動物達の話し声が聞こえてきそうだと妻は感動している。
Potter Attractionの前のレストランは花に埋まっている。この写真の右上の飛行物体は何だ!!!
街を散策する。明日はスコットランドに入るのだが、今夜のナイトキャップが切れている。街の酒屋でスコッチをゲット。
Windermere湖畔を歩く。人は大勢いるのだが静かに感じるのは何故だろうか?松島アキラの湖愁が頭に浮かぶ。
古いとお思いでしょうが、我が青春時代の愛唱歌だ。それにつけても、ここの白鳥はデカイ。
Far Sawreyまではフェリーに乗る。大変分かり易い警告標識に従いサイドブレーキをしっかり引いてコインを用意して待つ。
対岸から懐かしいフェリーが近づいてくる。やがて接岸、まったく変わらぬ風景だ。
フェリー上では車から出て心地良い風を受け、湖の周りの景色を楽しむ。あちこちに美しいリゾートハウスが見える。
豊かな国だ。
Far Sawreyの岸が近づいてきた。こういう場所の湖水も決して汚れていない。気持ちが良い。Near Sawreyまで3km足らず、
カーブと登り坂のドライブで珍しく早い帰還だ。
部屋のベッドの上に、洗濯物が綺麗にたたまれて置いてある。Margaretのご好意に対し早速お礼に伺う。
Ees Wyke Country House
今回の部屋は3階の屋根裏部屋のツインだ。清潔で設備も整い気配りに行き届いた部屋だ。黒い梁と白い天井のコントラストが
良い。唯一の天窓だが採光は充分で、ここからの眺めが素晴らしい。白夜の薄明かりに浮かぶ湖と、移ろい行く空の色を飽きずに
眺める。
スタンドの灯も入り良い雰囲気でディナーが始まる。実は今夜はパブTower Bank Arms の雰囲気を味わう予定であったが、
フランス人ご夫妻から今夜も一緒にディナーを楽しみましょうとのお誘いが朝食の時にあったので急遽変更したのだ。
今日の食前酒はシェリーだ。もちろんテーブルは別々だが同時にグラスを上げてカンパイ。前菜は私がキノコのソテーで
妻はテリーヌだ。魚料理は共通でフィッシュケーキ。(手をつけてしまってから写真撮影を思い出す。)
メインは確か鹿肉の料理だったと思うが定かではない。妻はサーモンのソテーだ。
Margaretのサービスは相変わらず無愛想だ。皿を下げる時、ご馳走様と言ってもわずかに照れ笑いを浮かべるだけだ。
掃除やベッドメーキングなど完璧なのだが玉に瑕だ。その代わりなのだろう、オーナーシェフが時々現れ、料理の説明をしたり
ワインを注いだりして持て成す。使っている食器がリモージュであることをフランス人夫婦が喜ぶとオーナーも満更でもない。
フランス人ご夫妻とは釣りの話が面白い。旦那の自慢話と奥さんの話が食い違う。旦那が顔を赤くして主張する。
よほど釣りが好きなのだろう。スコットランドでのサーモン釣りはもちろん有料だそうだ。そして釣り上げたサーモンは、
その重量に応じたスモークサーモンに交換してもらえるのだという。良いシステムだ。
お互いにこれから向かうスコットランドの日程や見所などについても楽しい話題だ。
デザートの後はラウンジに移り、コーヒーとシングルモルトを楽しみながらオーナーシェフも加わりまたお喋りだ。
たっぷり3時間のディナーはお腹も心も満足だ。
”Topic” Monkey Puzzle Tree Topic一覧はこちらへどうぞ
昨日のHolker Hall、本日のEes Wyke Country Houseと続けて登場したMonkey Puzzle Treeについての薀蓄を傾けてみよう。
(何のことはない、インターネットでチョチョイと調べただけだが…。中でも
このサイトが出色だ。)
和名はチリ松。松と名が付くが分類はナンヨウスギ科というからややこしい。原産のチリには猿はいないそうだ。
Monkey Puzzleの名前が付いたのは19世紀に、あるイギリス人が残した”この木に登るのは猿も困惑するだろう”
とのコメントに由来する。”猿の困惑”とは愉快な名だ。
樹高は20メートルにもなるという。記録では45メートルにも及ぶと言う。
初めてこの樹を見たのは1999年、コッツウォルズの民家に3泊ステイし、ヴィレッジ・ホッピングとガーデン巡りを楽しむ
ツアーに参加した時のことだ。ロンドンでのフリータイムにキューガーデンを訪れこの樹を見た最初の印象は、
1本の枝が手長猿の長い手にも、また、尻尾にも見えた。いっぺんで気に入った。その後”猿の困惑”と知り益々好きになった。
この実が3cmもあり、これまた、おいしいのだという。食いしん坊としては、一度味わってみたいものだ。チリの国定記念物に
指定されているという位だから、おいそれとはいくまい…。
この樹の8千万年前の化石は”ジェット”という宝石だという。益々ありがたくなってきた。
妻に言うと藪蛇になるから内緒にしてある。
この辺りでネタも尽きてきた。おあとがよろしいようで…。
写真は上記サイトから
写真たっぷりの旅行記をご覧ください
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