第9日 6月11日(金) 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
この旅1番のお天気と言える。海風も気持ちが良い朝だ。Fuchsia Cottage は名前の通り生垣にもフクシアが使われていた。日本では信じられないくらい大きくなるものだ。
ただ、今咲いている限りでは色・形に変化が乏しかった。フルイングリッシュブレックファストはボリュームたっぷりだ。
特にベーコンが厚くて塩味が抑えられていて美味しかった。 Tom もとても親切だ。そろそろ帰り支度をしようとパッキング
用に紐を求めたら、あれこれ持って来てくれて、用は足りたかと心配してくれた。
残りあと2日となった。今日はいよいよ Exmoor を横断する。楽しみにしてきたポイントも幾つかある。安全運転で出発。
「 Clovelly 」は村全体が保護されていて
車から隔絶されている。 Visitor Centre で入場料を払って徒歩で巡る小さな漁村だ。英国一
Photogenic と謳われる美しい村だ。
Visitor Centre から少し下ると石畳の道になる。石畳といっても平らな石ではない。直径20 cm くらいの
丸い石を敷き詰めた道で、ごつごつして歩きにくい。( East Sussex の Rye という漁村にもあった)
道幅3 m 程度の通りの両側は多くが民家だ。所々に B&B や Shop などが現れる。どこも花でいっぱいだ。そして
良く手入れされている。自宅の庭の花を摘んでいた女性に声を掛けてみた(写真下左から2枚目)。良く見ると店で買ってきた
ビニール袋の土に直接花を植えてある。鉢植えだと風で飛ばされてしまうから、これが良いのよ、と言っている。
写真を撮らせてと言ったら、この私を?どうしようと言いつつポーズを取った。
見ていた隣家のおじさんがわしはモデルにしないのか?と…皆で大笑いだ。
家々の花を学ぶ。こういった民家の小さな庭が、我が家の庭の参考になる。急勾配の坂道だ。下を見れば家の間から青い海
(写真上左)。振り返れば帰りが心配になる程の上り坂(写真上右)。
自動車の入らない通りの交通手段としてロバがいるはずなのだが朝が早いせいか、平日のせいか見当たらない。代わりに
板ゾリが活躍していた。手作りの無骨な板ゾリを若者が牽いてごみの回収をしていた。この滑りやすい石畳だから出来る芸当だ。
急な坂ではそりを後ろから牽いて落ちないようにしている。牛乳や新聞も同じようにして配達していた。クロテッドクリームも
大きなカートンで配達されていた。美味しそう。
横道に逸れてみた。やっぱり花で飾られている(写真下右)。突き当りから港が見えた。干潮で水はない(写真下左から2枚目)。
あの突堤の先まで行って、下からの村の姿を写真に収めよう(写真下左と中)。まだまだ下らなきゃ。ガンバロー。
港は小さなものだ。周りにホテルとインが1軒ずつある。ホテルの裏にパーキングがあった。今の世の中、泊り客や従業員まで
この坂を昇り降りはさせられないだろう。納得。
突堤にこれからクルーズに出る一団がいた。干き潮でクルーザーが入ってこられないのでボートで渡るようだ(写真上右から2枚目)。
大きな荷物を持っているが、何日くらいの旅なのだろう?どこに向かうのか?我々もそんな旅をしてみたいものだ。その中の
女性が写真をお撮りましょうと声を掛けてくれた。ありがとう。
何ともきつい登りだ。村の住民は上か下のパーキングを利用したとしても不便なことだろう。それにも増すこの村の住民としての
誇りがあるのだと思う。石畳を登りきった所に
「 Ann Jarvis Designs 」というシルクショップがあった。スカーフ、ネクタイ、バッグなど
こぢんまりと並べてある。少々お釜っぽいデザイナーが日本ファンだとのことで、日本の竹をイメージしたデザインのスカーフを
薦める。予定したお土産でまだ決まっていなかった人にぴったりのものが見つかった。こんな買い物が楽しい。
(相手から大変喜んでもらえた)
Visitor Centre でカラフルで面白い形のヌガーのようなお菓子を買う。絵本のコーナーで孫へのお土産として
ジージが1冊、バーバが1冊…また荷物が重くなる。
Clovelly でずいぶん時間を費やした。今日のスケジュールは過密すぎる。期待のポイントをゆっくり楽しむ作戦に
変更し、予定した3つのポイントを思い切ってパスした。
A 39(昨日の Newquay 付近から始まった道だ。延々と続く)を進んでいたつもりが、いつの間にやら
A 361を走っていた。 U ターンし元に戻ると渋滞にはまる。こんなためにパスしたのじゃないが…。まぁ、いいっか。
Lynton に入った。パーキングを探す間も家々の花がきれいだ。思わずスピードが落ちる。これは期待できそうだ。
この街で、何をおいてもしたかったのは、
「 Lynton & Lynmouth Cliff Railway 」に乗ることだ。これは下の海岸沿いの村
Lynmouth とを繋ぐ水力によるケーブル・カーなのだ。この存在を知ったときの胸のときめきは現地へ来て更に高鳴る。
こんな事が旅の醍醐味だと思う。だからウェブサイトの情報はありがたい。
Lynton は坂の街だ。パーキングからかなり登ったところで、アーチが出迎えてくれる(写真下左)。何時出来たの? どんな
システムで動くの? 何人乗れるの? そんな私の疑問に答えてくれる本がお土産であるらしい(写真下左から2枚目)。
興味と感動でカメラのレンズはケーブル・カー関連しか捉えていない(写真下中3枚)。 Top Station はお花が綺麗だった
はずなのだが写真が残っていない。
どうして動くのか? 答えが右の写真だ。「動力注入中」。 Top Station で、ケーブル・カーのタンクに700ガロン
(3立方 m )もの水を入れているところだ。満タンになった所で Lower Station の ケーブル・カーの
タンクから水をこぼすと、上下のバランスの差で上のCarが下のCarを引っ張って降りていくのだ。終点でのブレーキも
水をこぼして調節しているらしい。ちなみに水は街の名前からも解るように Lynn 川から引いている。
Top Station と Lower Station の標高差は500 feet (153 m )、レールの長さは
862 feet (263 m )だから勾配70%の急坂だ。まるでエレベーターのようだ。1890年から営業運転して
いるらしい。定員は40名、10トンとなっている。水の重さが3トンでもまだまだ余裕だ。
それにつけても、この発想には感動する。省エネ、エコロジーの先取りだ。
ようやく乗車の順番が来た。デッキは先客がいて立てない、残念(帰りは絶対デッキに)。スピードもかなりのものだ。
Lynmouth は小さな港町だ。突堤の先端には見張り小屋のようなものが建っていた(写真下左)。
小さな港にはボートが浮かんでいる(写真下左から2枚目)。 St. Michael’s Mount 以来、
干潮の港の無残にも腹を見せているボートばかり見てきたので、水に浮かぶボートにホッとする。
港から道路を隔てて、土産物屋とホテルが並んでいる。何と綺麗に花で飾られていることか(写真下右3枚)。思わず足が速まる。
一つひとつ観賞しながら緩やかな坂を上った。ホテルの玄関も茅葺でお洒落だ(写真上右)。中を覘くとバーでは大勢の人が
ビールを愉しんでいた。つい誘われるが、長い移動が待っている。
帰りはお目当て通り、1台見送ってデッキに立った(写真下左)。満足。見晴らしサイコー。 Lynton にはかなり 大きな建物も多い(写真下右)。ショップも充実している。エスニック風の木製品の店で変わった鉛筆を購入(写真下中)。 ガーデン・コンテナのお店では欲しいものがいっぱいだ。なるべく嵩張らないようなものを1点だけと決めて、 可愛いフェアリーもののプレートを Get 。妻が大喜びしている。
Lynton から Lynmouth までわずかな距離だが、物凄い下り坂だ。勾配25%。ケーブル・カーの急勾配が
納得できる。
Exmoor の海岸沿いを横断している。素晴らしいパノラマだ。右手はどこまでも続く緑の牧場。かと思えば赤茶のヒースの
海(写真下右)。左手に真っ青な海。
海の向うにはウェールズの陸影も薄っすらと浮かぶ(写真下左2枚)。来年の今頃はあの大地に…きっと。
またしてもピクシーに好かれてしまった。 Culbone の村はずれにあるというイギリス一小さな教会を探したのだが、
石ころだらけのオフ・ロード・ドライブを30分ばかり愉しんで?パス。
Exmoor の快適ドライブはまだ続く。前にも後ろにも車の姿が見えない。長い下りが続いて思わぬスピードになってしまう。
Porlock Hill も勾配25%になる難所だ。ギアーはローに入れっぱなしだ。所々に現れる緊急避難路
(砂利の上り坂)が心を引き締めてくれる。これのお世話にはなりたくない。ここにはイギリスでは珍しい有料道路があって、
勾配が緩やからしい。コーチ(バス)はそちらを通るよう警告が出ていた。
Selworthy という、おとぎ話の世界のような村にやってきた。この村だけでなく一帯がナショナル・トラストの管理下に
あるようだ。 A 39から狭い道を登っていくと左手に茅葺のコテージの一群が見える。はやる気持ちを抑えパーキング探し。
パーキングはコテージを通り過ぎた丘の上の教会の下にあった。パーキングから広大なエクスムーアの眺望が何にも遮られず
眺められる(写真下左)。教会のベンチに座ってゆったりと楽しんでいる老カップルがいた。
コテージは緑の芝の中に数軒が点在している。静かな佇まいである。どのコテージも煙突が幾つもある。暖炉の煙突だ。
出窓の屋根まで茅葺だ(写真下中2枚)。素晴らしい。
パーキングの車の数と人の姿が一致しない。声を出すのも憚られるようだ。こんなベンチに座って読書なんてのも贅沢な
楽しみ方だと思う。それに飽きたらバラの花柄摘みなどしている内にクリムティーの時間に…。
オッと、そんな空想より現実、ここには Award (写真下左)を何回も受賞した素晴らしいティーガーデンがあるのだ。
Periwinkle Cottage Tea Garden だ(写真下左から2枚目)。ワクワクしながらドアーを開ける。
静かだ。テーブル席が5、6席、客はいない。どうしたものか?忙しそうなホスト風の男に案内を乞う。お好きな席で
お待ちください、と。空いているから真ん中の席に着いた。落ち着かない気持ちで周りを見渡す。黒光りした柱と梁、
白壁にはおびただしい数の絵と飾り皿、何世紀か前のイギリスの世界に迷い込んだようだ(写真下中)。当然クリムティーの
つもりだったが Home Made のスィーツもケースに並んでいる。ここはクリムティーとスィーツを1つずつオーダーした。
ホステスが盆を捧げて出入りする。外を見てびっくり。芝生のガーデンに沢山のお客さんがティーを楽しんでいた。
今日のような快晴では、私は室内がホッとするのだが、こちらの人達は日光浴日和なのだろう。文化の違いだ。
テーブルの上は全てが可愛らしい花柄だ。テーブルクロスがティーコージーがティーポットがカップ&ソーサーがシュガーポットが
そしてケーキ皿まで。
クリムティー(写真上右から2枚目)のクロテッドクリームはコーンウォールやデヴォンのように糸を引く濃厚さはないが
(ここはサマーセット州)コクがあり爽やかな香りのするクリームだ。特別なジャムがあった。 Longing Berry の
ジャムだ。これの色、香り、味わいともにすこぶる満足した。スコーンはどちらかと言えばしっとりとした感じで、
クロテッドクリームとLonging Berry ジャムとの一体感があり、ペロッとお腹に納まった。スィーツはチェリーと
木の実の入ったクッキーだ(写真上右)。ほっくり、さっくりとして甘からずミルクティーにピッタリだ。
味、雰囲気ともたっぷり楽しんで、もう一巡り Thatched Cottage を楽しむ。のどかだ。
Dunster である。 A 39から(まだ A 39だ) A 396に入って直ぐの街である。街の真ん中を A 396が貫き、
その両側に石畳の( Clovelly と一緒だ)昔の通り(写真下右)が残っている不思議な街だ。街の北側に昔の市場
Yarn Market があった(写真下右から2枚目)。六角形のとんがり屋根の変わった建物だが今は何にも使われていない。
寂しげである。
ここに駐車し、緩やかに坂道を登ると Dunster 城だ。城門から良い写真が撮れた(写真下左)。城内のマーガレットが
満開だ。城の裏の丘に登ると Sumerset の豊かな大地が一望できる(写真下中)。城主の気分だ。世は安泰なり。
今日も沢山愉しんだ。 B&B に向かう前に、今日のディナーの場所を確認しておこう。 Blue Ball は The AA
の2004年 Pub of The Year に輝くパブなのだ。どんな店なのだろう、是非寄ってみたい。確認しておいて
良かった。見つけるのに苦労した。という訳で探した最寄りの B&B が Home Leigh House だった。またまた
迷いに迷っての到着だ。ここまで田舎であると、道を聞こうにも人家も人影もない。うろうろしている間に2,3kmは直ぐ
進んでしまう。電話もない。行動あるのみだ。野中の一軒家だった。
ここがこの旅最後の宿、と言うことは荷造りが待っている。全ての荷物を2階の部屋まで持ち込むのは骨が折れた。
ホストマザー Susan は気のいい明るい人だ。夕食はどうする、と聞くので、 Blue…と言い掛けたら、
Blue Ball を知っているの?あそこを薦めようと思っていたの。と、まくし立てる。侮っちゃーいかんぜよ。
それなら予約をしたほうが良いわ、私が電話しておく。何時にする。それから私たちは両親を迎えに行くので今夜は留守に
するは、出入り口の鍵を渡しておくわ、夜の出入りは裏口からお願い。てな訳でキッチン、リビングを通り抜け裏口を教わる。
夕食は8時にして、それまで荷造りだ。割れ物が多い。これらを機内バッグに何とか詰め込み、ティーポットはダンボールで
持ち込むこととし、捨てるものは捨て何とか納まりそうだ。そうこうしていると、そろそろ出掛けないと予約時間よ。と、
Susan の声。お節介焼きのおばちゃんだ。
Blue Ball の外見や玄関は農家の納屋のような感じでパッとしない(写真上左)。期待して来ただけにちょっと…
首を捻る。ドアーにはアワード受賞のプレートが誇らしげに張ってある。しかし、中に入ってびっくり。外見からは想像付かない
天井の高さもあり、木をふんだんに使った内装も清潔感がある。2階の窓際の席に通された。外はまだ明るい。
かなり山の中といったロケーションなのだが、シーフードメニューも充実していた。旅の締めに相応しく
(実はもう一つ締めがあるのだが)シーフードにした。妻は Sole のレモンソース、一人で食べるには大きすぎるかと
思ったが、淡白な味わいだそうで、ペロッといってしまった。私は英語が良く分からないが、魚のソテーにトマトと
バジルのソースらしきものをオーダーした。これが当たり。鯖のような魚で脂も適度に乗って、ソースもマッチして美味しかった(写真上中)。
隣の席に2組のカップルがやって来た。皆良く飲む。ビール専門の男、白ワインのカップル、赤ワインの女性。話も弾んでいる。
料理の写真を撮りたいので、お断りの声を掛けた。例によって撮りましょうか?の返事。そうじゃなくって、旅の全食事を
アルバムにするのだと説明すると、感心したのかしないのか笑っていた。日本から来たこと、この旅のコース、今夜が
最後の夜で The AA で知ってわざわざここに寄ったことなど話は通じた。かく言うが、話したのはもっぱら妻で
私はといえば度胸と単語の羅列で済んでしまうので勉強する気にならない。妻は週一の NOVA を5年以上頑張っているので
かなりのものらしいが、私に言わせると度胸が足んない…そお云う問題じゃないか。まあ、二人三脚何とかやっている。
先に帰ると言うと、記念に写真を撮ろうということになった(写真上右)。
B&B に戻る頃には日も沈んだ。真っ暗な裏口で慣れない鍵穴をゴソゴソ…ようやく開いた。シャワーを浴び窓からの
涼しい風に当たりながらスコッチを飲む。日本ではオンザロックなのだが、旅の空では贅沢は言えない。大概ストレートで
やることになる。バランタイン17年だからこそだが…。満たされる。思えばあっという間の9日だった。ここまでの無事と
沢山の親切に感謝しつつ…おやすみ。 【T】
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