爽やかな朝を迎えた。さすがに疲れていたのだろう、昨夜は食事から帰ると部屋の様子を見る間もなくシャワーを浴び眠りに
就いた。朝は7時までぐっすり眠られた。シップを貼った腰も痛みはない。窓を開けるとひんやりとした空気が肌に心地よい。
室内も清潔に保たれ心地よい。再びベッドに横たわり窓からの緑の大木に停まる鳥に寛ぐ。あきない。
朝食に降りて行く。ホストの Tim は人当たりの柔らかな男だ。一人でここを切り盛りしているらしい。2階の壁に浴衣が
掛けてあった。聞けば、彼のおじいさんが昔日本に来たことがあり、日本の話を良く聞かされたとのことで、おじいさんの
思い出として飾ってあるそうだ。
さて、お楽しみの朝食は、オレンジジュースとグレープ・フルーツから始まる。グレープ・フルーツはホワイトとルビーの
盛り合わせである。得した気分だ。メインは、カリカリのベーコン、独特な歯ごたえのソーセージ、フライドエッグ、
ジューシーなトマトにマッシュルームとお決まりのメニューだ(写真下左)。しかし、ベーコンの塩気が卵やトマトを
おいしくし、ミルクティーとも良く合うことに気づく。おいしい。
ここにはダイニングルームが2つあり私たちは個室でいただいた。大きな部屋には若者のカップルが2組やってきた。
入り口は開いているのでそれぞれに「 Good Morning 」、「 Morning 」と気持ちよく声を掛けてくれる。
窓辺には藤の花が下がり、玄関横のボーダーには大きなポピーや雪柳が咲いている。バラの花も色彩を抑えて趣味が良い。
調和の取れたホスピタリティーを感じる。
今日からは Dartmoor 周辺を楽しむ。昨日のドライブではまだ Moor の雰囲気は感じられない。最初の訪問地
Buckfast Abbeyの入り口に Moor のランドマークを見つけたが(写真上中)、まだ Moor の感じは
しない。民家の板塀に面白いオブジェを見つけた(写真上右)。センスが感じられる。
「 Buckfast Abbey 」は規模としてはさほどでは
ないが、 Moor の片隅に静かに佇む荘厳な修道院であった。小さいながら良く手入れされた庭園があり、ハーブガーデン
(写真下左)、ローズガーデン(写真下右)が見頃であった。裏を流れる Dart 川の流れも美しく遊歩道が設けられている。
静かだ。
Church の1番奥、川に面したところに Chapel があった。人影はなく恐る恐る入ってみて感動した。
ステンドグラスでキリストが画かれており厳粛な静けさに包まれているのだ(写真下中)。しばし時間を忘れ見とれていた。
後から来た女性も声もなく立ち尽くしていた。特別な儀式のためのチャペルらしい。駐車場もお土産売り場もよく整備された
好感度の高い Abbey であった。
今日も予定通りには進みそうもない。次なる目標は round robin である。 Totnes と Dartmouth 間をクルージング、 Dartmouth から
Kingswear 間ではフェリー、 Kingswear と Paignton 間は蒸気機関車そしてバスで Totnes に戻る。この周遊コースが round robin だ。
この旅のビッグイベントの1つである。船着場探しに時間を取られ、11時30分の便に対してチケットを手に入れたのは11時ジャストであった。
既に長い行列が出来ている。何事につけ並ぶのが好きな国民性と思う。いろいろなところでおとなしくキューを作っている。快晴で暑いくらいだ。
売店でミネラルウォーターを仕入れ列に並ぶ。観光バスが何台もやってきて続々と列は長くなる。日本人らしき女性が二人やってきて、
チケットを求めていたようだが、満席になったのかあるいは時間がないのかあきらめて帰った。無駄足を踏んだようだ。
そうなのだ、私は旅の計画は綿密に立てる。そのほうが効率的だし、そこまでしても思わぬハプニングはいやでも経験できるのだ。そんな訳で
ウェブサイトの情報にはいつも感動と感謝をしている。この round robin についても 「 River Link 」
のサイトから時刻表などを確認済みだった。
大勢の人が乗船するのに15分程掛かって、いよいよ出発だ(写真上左)。川面は穏やかで滑るように進む。川岸の家々は
別荘だろうか。静かな佇まいだ。遠くに広がる丘陵が開放的だ。海が近いので盛んにカモメが飛来する。向こうの丘は
パッチワークのようだ。川幅は徐々に広くなる。大河の流れである。 Dartmout 発の船とすれ違う。どちらも乗客は
満席だ。
暑いので待っている時から乗船したら売店で1パインとのビールを楽しみにしていたのだが、周りの人たちに動きがない。
ここではこちらが外人、結構注目を浴びているのだから、目立った行動は慎まねば。泣く泣くミネラルウォーターで我慢。
川面には大小、様々なボートやヨット、ウインドサーフィンが浮かんでいる。岸辺のボートハウスも茅葺屋根だ(写真上中)。
川幅は更に広がる。左側にあのミステリー作家アガサ・クリスティーの最後の住まい
「 Greenway House 」が木々の間から白亜の姿を見せた(写真右から2枚目)。
右側には Britania Royal Naval College (英国王立海軍大学)が丘の上に堂々の威容を誇る
(写真上右)。
同じリバークルーズだが昨年の Norfolk 地方で経験した Broads のクルージングとまったく雰囲気が違う。
Broads は水郷の雰囲気であった。胸が締め付けられるような神秘さがあった。翻ってこちらは Dar 川は海に近い
大河の趣だ。抜けるような開放感と弾むような明るさを感じる。どちらが良いという訳ではないが…。
そろそろ Dartmouth に近づいたようだ。蒸気船(写真下左)も蒸気機関車(写真下中)も煙を吐いて現役で
がんばっている。さすがに蒸気機関発明国だ。そして、古いものを大切にする国だ。蒸気機関車は後ろ向きで客車を
引っ張っているようだ。
両岸の家々が面白い。カラフルなパステルカラーの家や、ティンバーハウスが斜面を所狭しと埋めている(写真下)。
別荘も多いのだろう。後からあの裏通りを歩いてみよう。どんな出会いがあるか、楽しみだ。
クルーザーの桟橋を上がったところが瀟洒なティンバーハウスであった。ホテルだろうか。小型ボートの港は干潮で干上がって
ボートは腹を剥き出しだ(写真下左)。おしゃれな商店街はハンギング・バスケットやポットに寄せ植えされた花々が美しい。
大きな酒屋さんがあった。シングル・モルトがたくさん並んでいる。心が動く。しかし、今日は荷物になる。まだ機会はあるさ。
メインストリートを抜けて裏通りの細い坂道を登ってみる。車も通らない生活道路だ。静かな昼時、人の通りもない。
石垣にはエリゲロンやカンパニュラが頭上に覆い被さるように咲いている(写真下左から2枚目)。庭のおじさんに
「きれいですね」と声を掛けると、「これは伸びすぎて困るんだ」との返事。うらやましい。
そろそろお腹がすいた。港町 Dartmouth だ。この旅のテーマの一つ「シーフード」をと思い店探し。手ごろな店が
見つからず歩いて行くと、細い通りに「 Local Crab 」の地味な看板を発見。テイク・アウェイのサンドウィッチ屋さん
であった。母娘でやっているらしい。「ローカルクラブ」と「スモークサーモンとシュリンプ」の2種をオーダーする。
カウンター越しに娘さんと写真を撮らせてもらおうとしたら、表に出てきてくれた。本当に親切だ(写真下中)。
ずっしり重たいサンドウィッチを手に、ベンチを探す。川岸のスタンドで飲み物を買いベンチでランチ。新鮮でおいしい。
カモメがおこぼれを求めてやってくる。ゆったりした時間だ。
食後は近くの公園を散策する。可愛いオブジェが気に入った。花もきれいだ(写真下右2枚)。公衆電話から子供たちに
電話してみた。皆、留守だった。東京は今頃土曜夜10時、まだお出掛けか。元気な旨、留守電へ入れる。
フェリーで Kingswear に渡る。
「 Paignton Dartmouth Steam Railway 」の蒸気機関車の出発までには少し時間がある。
駅の横の細い階段を登ってみる。民家の塀の間を抜けると、海が見えた。教会では結婚式のリハーサルをしていた。
汽笛が聞こえた。蒸気機関車が到着したらしい。そろそろ駅に戻ろう。
駅では機関車の前で大勢の人が記念撮影をしている。例によって「お撮りしましょう」と言ってくれる人がいる。
お言葉に甘える(写真下左)。蒸気機関車は、ここに向かうときは前向きで牽引し、帰りは後ろ向きで引っ張っていくようだ。
さっき船上から見たとおりだ。なるほど。
客車は固定式ボックスシートだ。あまり良い座り心地ではない。車両はかなりたくさん連結されているが、満席状態だ。
イギリス人は蒸気機関車が好きなようだ。各所に保存鉄道が残っておりボランティアなどの協力で運営されているようだ。
汽笛の音も高らかに出発だ。蒸気の音も懐かしい。カーブに差し掛かると皆、窓から身を乗り出して撮影だ(写真下中)。
次の停車駅はアガサクリスティーの ABC 殺人事件の舞台の1つ「 Churston 」だ(写真下左から2枚目)。
駅名の標識を撮ろうと構えていたがうまく停車位置が合わず失敗。悔しがっていると、隣のおじさんが「こっちにもあるぞ」と
反対側のホームを指差している。日本語が分かるのか?・・・見られているんだなー。
Paignton の海岸は海水浴を楽しむ人で賑わう(写真下右から2枚目)。 Paigntton から Totnes は
バスである(写真下右)。これには一般乗客も乗り降りする。生活臭があって面白い。楽しい旅だった。
Totnes の街中でバスを降り、教会やお城を見学したが、期待した程ではなかった。ハイストリートの靴屋でデザインの
気に入った紳士靴を発見。しかし、好みの色のものはサイズがなく断念。妻が気に入ったTシャツもサイズが合わずこれも断念。
釈然としないでパーキングに戻ると、愛車の窓ガラスには、「駐車時間オーバーの反則金通知書」が張られていた。
このことは「ドライブ−パーキング」で述べた。潔く支払うこととし、
次に向かおう。
round robin で時間を使ったので予定の Coleton Fishacre Garden は
スキップする。ナショナルトラストの興味ある Garden だが致し方無い。ところが、 Paignton に向かう
A385が見つからない。地図を何度も確認し、間違いないはずなのに分からない。またもやピクシーが悪戯を始めたようだ。
ようやく Cockington に到着。ここは中世の村の佇まいがそのまま残る可愛い村として紹介されている。 駐車場を出ると数軒の茅葺の民家が寄り集まっている。フロントヤードも壁面も花が溢れている(写真上左)。広い芝生の広場の 先にお屋敷が見える。 Cockington Court だ。既に18時を回っている。この広い広場にも、2,3のカップルの 姿しかない。お屋敷の庭は蔓バラが盛りだった。ここでも写真を撮ってもらったが、撮影してくれた奥さんの帽子のつばが 写っていて面白い(写真上中)。ここでは馬車にも乗れるらしいのだが、この時間ではもうお仕舞いだ。やはり観光地は 賑わいの時が良いようだ。
Torquay は大きな街だ。案の定、パーキング探しで時間を取られる。「イギリスのリビエラ」と喩えられるだけに繁華で 瀟洒な街だ。港は白亜の建物で囲まれている(写真上中)。アガサクリスティーの像で記念撮影(写真上右)。もう19時半。 欲張ったスケジュールで虻蜂取らずの感が無いではないが、もう1つお目当てがある。 「 Babbacombe Model Village 」だ。東武ワールドスクウェアのイギリス版であろうか。
先ずは食事にしよう。ジャケットポテトとハムのアスパラ巻きをオーダー。「ジャケットポテトは、チーズかツナか」と聞くので
ツナと応えた。拳大のジャガイモ2つに缶詰1つ分のツナが出てきた(写真上左)。ハムも巨大厚切りである
(写真下左から2枚目)。ビールとともに美味しくいただく。
さて、 Model Village だ。東武は知らないが、2001年に訪れたコッツウォルズの
Bourton−on−The−water のものと比較するとずっとスケールが大きく楽しめた。イギリスの今までに訪れた
懐かしい場所、これから尋ねたいと思っている憧れの地、日常の街角の出来事や事件などがリアルに再現されている。
飽きることがない。
10時半までの営業だが、何とか明るい内に帰り着きたい。そろそろ辞去しよう。シュミレーション通り快適な走りだが、
途中からはヘッドライトが必要になった。これもまた楽し、10時30分になっていた。夜のドライブは久しぶりだ。
無事帰着。用事があって今夜は出かけて留守だと言っていた、 Tim も帰っていて笑顔で出迎えてくれた。 【T】
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