第10日 6月6日(土) 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
今日の行程 Southcliffe Guest House --- Arlington Court --- Lynton - Lynmouth --- Alta Lyn Alpacas ---
Exmoor Glass --- Selworthy --- Luccombe --- Packhorse Bridge --- Southcliffe
今日の走行距離 110km
今日の万歩計 11,700歩
Southcliffe Guest House サウスクリフ・ゲストハウス
今年の旅は2日目の朝の内、短い時間濃い霧が出た以外は晴天続きだ。晴れ男・女を自認する私達だが、ここまで晴れが続くのは
イギリスの天気としては奇跡的だろう。
しかし、今朝はとうとう降りだした。ようやくイングリッシュライクなお天気と言いたいところだが、かなり強い降りだ。
この雨では予定していたエクスムーアのホース・トレッキングは見送らざるを得ない。残念だ。
雨バージョンのスケジュールに見直しを図るが、アウトドア派の身にはインドアの情報は持ち合わせが少ない。
さて、今日は如何に楽しもうか?
ダイニングに一番乗りして窓際の特等席に座る。フルーツにヨーグルト、オレンジジュースでフルイングリッシュを待つ。
カリカリ三角トーストにミルクティーもしっかりいただく。旅の疲れはあるが、食欲は衰えを知らない。
食事を終ってロビーのゲストブックの隣に"Rick Stein Seafood Restaurant"と書かれたメモがある。「この街にもこのレストランが
あるのか?」と聞いてみると、パドストウのレストランだと言う。「3日前に行ってきた」と伝えると、さすがはシェフのAndyだ
「どうだった?」との質問だ。「昨晩のディナーほどではなかった」というと、「そんなー」と言いながらも
まんざらでもない顔だ。
「ところで今夜のディナーはどこにする?」と言うので「今夜もここで食べたい」と言うと「土・日はディナーは出せない」
とのことだ。「今夜はこの旅の最後のディナーなので良いレストランを紹介して欲しい」と伝え、
帰るまでに予約を取っておいてくれるようお願いする。
部屋に戻ってAlta Lyn Alpacasのおばさんに電話を入れるが、応答なしだ。後程もう一度連絡してみよう。
Arlington Court アーリントン・コート
昨日訪問予定だったが、ローズムーア RHS ガーデンを再訪するためカットした
Arlington Court
を訪れる。10時に到着したが、オープンは10時30分だった。雨の車中で時間を潰す。パーキングの車の数が多い。
スタッフ用パーキングは別になっている。後から到着した車を見ていると、トランクから合羽、長靴を取り出して着込むと、
傘も差さずに歩き出す。どうやら週末のウォーキングに出かけるようだ。雨を少しも苦にしないところが、イングリッシュライクだ。
雨の中、白孔雀が現れ、案内標識に乗って歓迎してくれる。ウォーキング準備をしていた女性と「驚かせないようにネ」と
目配せしながら、そっと近づいてシャッターを押す。白孔雀の方は人馴れしていて逃げる様子はない。
Alta Lyn Alpacasのおばさんに電話を入れるがまたもや応答なしだ。アルパカは諦めようか思っていると携帯が鳴った。
応答できなかった丁寧なお詫びの後、14時30分に来れるならアルパカを見せられると言う。二つ返事で了解する。
なんだか空が明るくなってきたような気がする。
オープン時間前だが、スタッフ用パーキングに駐車したスタッフが「中で雨宿りしなさい」とゲートを開けてくれた。
お館は予想していたよりは小ぢんまりしているが、教会(St James Church)もある大邸宅だ。チチェスター家が
500年以上も受け継いできて、1949年にナショナル・トラストに寄付されたものだ。
現在あるお館は1822年に造られたものだという(写真下中)。
更に奥にも古い立派な建物があるので行ってみると"The stable block houses"だ。厩舎をしてこれだからその豪壮さが分かる。
ここは"Carriage Museum"になっているが開館は11時だ。
お目当てのガーデンを訪れる。"Victorian Garden"入り口にサギの像がある。チチェスター家最後の住人がサギの生息地を含む
野生動物の保護に力を注いだ名残りなのだろう。蛇のようなものをくわえているのはゾッとしない(写真下右)。
"Victorian Garden"のOrnamental Pondの先の一段高いテラスにThe Greenhouse(温室)が見える(写真下左)。
この段が"Walled Garden"だ。温室から左右に美しいボーダーが広がる(写真下中3枚)。"Kitchen Garden"も広大だ(写真下右)。
"Carriage Museum"に戻る。全国のナショナル・トラストから集められた50台以上の19世紀の馬車(horse-drawn vehicles)が
展示されているという。なるほど、質素なものから豪華でゆったりとした馬車、タクシー馬車や長距用の辻馬車、
スポーツカー仕様の馬車までバラエティー豊かだ(撮影禁止なので写真は無い)。雨でお客さんが少ないので、
NTのボランティアさんが「説明しましょうか」としきりに寄ってくるが、ご辞退する。
Lynton & Barnstaple Railway リントン&バーンステイプル鉄道
父が鉄道員だったので、小学校低学年まで住んだ官舎は線路の直ぐ脇にあった。だから蒸気機関車の力強い姿を見て、
蒸気とレールの音を聞き、石炭の臭いを嗅ぎ、線路の振動を感じて育った。だから、蒸気機関車にはことの外、郷愁をおぼえるのだ。
一昨日からA39を行き来すること4度目、Lynton & Barnstaple Railwayの
"Killington Lane Station"の案内板が気になっていた。今、その方向に蒸気が立ち上っている。思わず左にハンドルを切る。
迷ナビゲーターの妻が「真っ直ぐよ!」とナビるが、ちょっと道草。、ステーションでは今、正に出発進行の瞬間だ。
車を飛び降り、シャッターを2度3度、それで満足だ。Lynton & Barnstaple Railwayと謳っているが、
現在はWoody BayとKillington Laneの間、わずか1km余りを結ぶラインのようだ。
Lynton - Lynmouth リントン − リンマス
アルパカ牧場の約束時間まで2時間ほどある。雨は降りしきるが、B&Bに車を止めてリントンとリンマスの散策に出る。
メイン道路のLee Road沿いのLynton Cottage Hospitalの壁に小さな看護婦さんの人形の前にバケツを置いた小屋が
取り付けられている(写真下左)。高校生とおぼしき女性二人が道路から3mほど離れているその小屋に向かって何かを投げている。
どうやら投げているのはコインのようだ。チャリティーの一つのようで、バケツにコインが入ればラッキーということなのだろう。
海外旅の常で我々のポケットには細かいコインが一杯だ。"HAVE A GO"に促されチャリティーするが、なかなかバケツに入らない。
だんだ向きになって来て、女子高生と交互に投げるが、とうとう誰も命中しなかった。
女子高生にサヨナラしてリンマスの街に下りる。ちなみにリンマス(Lynmouth)のマス(mouth)は河口を意味する。
リン(Lyn)川の河口の街だからリンマス(Lynmouth)だ。一方、トン(ton)は街(town)を意味する。リン(Lyn)川の畔の街だから
リントン(Lynton)という訳だ。他にも英国の地名にはham(村)、ford(浅瀬)、bury(城壁に囲まれた街)、combe(谷)
など語尾が共通の地名が沢山見られる。
5年前と全く変わらない姿でその町はあった。したがって撮った写真も5年前とほとんど同じだ。
5年前の方が花が多かったようだ。雨にもかかわらず観光客の姿は多い。ウインドーショッピングを楽しむ。
再びLynton & Lynmouth Cliff Railwayに乗り
リントンに戻る。1888年の設立というが、その時代に水の力で動かすことを考え出した人がいたことに驚く。
正にエコな乗り物だ。
5年前にここのお土産店で求めたフェアリーとバラをデザインした"Welcome Plate"はお気に入りだったが、
旅の直前に壊れてしまった。同じ様なものが欲しいと思い訪ねたが、品揃えが変わってしまい、期待したものがない。
別のお土産屋さんで自分用の羊の置物や友達への愉快な食器など幾つかの楽しい小物を見つける。
雨は相変わらずだ。雨宿りがてらクリームティーにしようとタウンホールの前のレストランに入る。
スコーン1つのクリームティーとレーズンパンのトーストをいただく。クリームティーはイチゴジャムでなくマーマレードだ。
これは初めてのことだ。レーズンパンはレーズンの味が濃く、共にとても美味しい。温かなミルクティーが体を温めてくれる。
アクシデント
アルパカ牧場の約束時間が近づきB&Bに戻る。駐車場ではウォーキングから戻ったらしいイギリス人のカップルが
合羽を脱ぎトランクに仕舞っている。この雨の中、良く歩くものだとつくづく感心する。
挨拶をして、さて出発だ。B&Bのゲートは狭い。右にカーブしながら抜けるのに雨滴と曇りで左前方が見え難い。
ナビゲーターに「左前部は大丈夫か?」と訊ねると、窓を開けて確認し「OK]と言うので、安心して進んだらガリガリッときた。
バックしようとするが勾配があるのでスムーズに行かず、またガリガリッとやってしまった。
ナビゲーターの言うことには「雨が降ってるし、地図を見るために眼鏡をしていたから良く見えなかったの」と、
迷ナビゲーターと分かっていて信じた私が悪かった。空が一層暗くなってきたように感じる。
石のゲートは傷んでいないようだが、ホストのAndyに報告し、"No problem"を確認し、ハーツの事務所にも連絡を入れる。
「ゲートの所有者のクレームがないのなら、問題ない」とのことだ。
こんなことを何時までも引きずっていたら楽しくない。明日ヒースローのハーツの事務所に着くまでは忘れよう。
Alta Lyn Alpacas アルタ・リン・アルパカ
約束の時間には何とか間に合った。昨日会った場所に行くと、程なく昨日の女性が現れた。どうやらここに宿泊(Self Catering Accommodation)
させるらしい。その1室に案内されアルパカ製品を見せられる。肌触りが良く暖かそうだ。妻のサイズにピッタリのボレロと
自分用にマフラーを求める。商売熱心で更にあれこれ薦めるが、サイズが合わないと断ると、今度は毛糸を取り出した。
「ベビーアルパカといって赤ちゃんのアルパカから採った最高級の毛糸よ。カシミヤよりずっと上等なの」と言う。
手芸の好きな長女へのお土産にする。お値段もリーズナブルで良い買い物をしたが、お目当てはアルパカだ。
歩いて3分、昨日何度も前を通った農家に案内される。どこにもアルパカの姿は見えない。
牧場は人目につかないよう生垣で目隠しされているようだ。
息子だという二人を紹介され握手を交わす。納屋の一隅に導かれ柵で隔てられ「アルパカはとても臆病な動物なの、
驚かさないようここで静かに待っていてね」と言って3人共去っていった。
「ヨーヨーヨーヨ」と言う掛け声がしたと思ったら、忽然と1匹のアルパカが現れた。子供のようだ。くりくりした目が可愛い。
我々を見て一瞬たじろいだようだ。身を硬くして静かに見守ると、お尻を振りつつ、目の前を通り、奥の納屋に収まる。
雨の中に放牧されていたから、牧草やら葉っぱやら付いていて美しいとは言えないが、可愛いことこの上ない。写真を撮りまくる。
再び「ヨーヨーヨーヨ」の掛け声で今度は団体でやってきた。ホワイト、キャラメル、チョコレート、ベージュ、グレー、
ブラックなどカラフルだ。全部で10匹ほどだろうか、納屋に収まるとフライパンに入れた餌を渡される。
アルパカは競い合ってフライパンに顔を突っ込んでくる。柵があるとはいえ、凄い勢いに腰が引けてくる。
1匹を捕まえて、羊の毛を刈る時のようなお座りをさせて、毛を掻き分けて見せてくれる。表面は汚れているし濡れているが、
中はふわふわしたとても柔らかな毛だそうだ。
アルパカは南米アンデス山脈の高地原産のラクダ科の動物で、インカ帝国時代より家畜として育てられてきたという。
アルパカには2種類あるが、ここで飼育されているものも、CMなどに登場するものもhuacaya(ワカイヤ)という種類だ。
貴重な体験をさせていただいた。今日の様子をホープページに載せると話したら、
「日本の方にAlta Lyn AlpacasのSelf Catering Accommodationを宣伝してね」と頼まれた。
Porlock Weir ポーロック ワイアー
5年前はピクシーに惑わされたか、見つけることが出来なかったCulboneの村はずれのイギリス一小さな教会の情報も、
今回はしっかり仕入れてきたのだが、少し歩かなければならないので、この雨では果たせない。
こんな日はショッピングに限る。ポーロック ワイアーという海辺の村に
Exmoor Glassという赤いグラスが特徴の店があるとの情報を
見つけてきた。この赤いグラスはCranberry Glassと呼ばれ、40回目の結婚記念日・ルビー婚の記念品とされるそうだ。
奇しくも我々は丁度1ヵ月後の7月6日が40回目の結婚記念日となる。小さなMartini Glassをペアーで求める。
姉へのアクセサリーやスカーフも見つける。
ショッピングもさることながら、この小さな村の美しさに目を見張る。斜面に立ち並ぶ家々が花と緑に囲まれている。嬉しくなってくる。
Selworthy セルワーシー
美しい小さな村といえばポーロック ワイアーと目と鼻の先にセルワーシー村がある。おとぎの国のようなロマンティックな村だ。
ナショナルトラスト管理だが、この村だけでなく地域一帯のムーアや森、農場、海岸とクリフなどを含め
Holnicote Estate
として登録されている。
5年前と同じ教会の前のパーキングに車を止め、村に入る。深い豊かな緑に囲まれペリウィンクル・コテージ(Periwinkle Cottage)
が見下ろせる。衝撃的な光景だ。暖炉には火が入れられているのだろう。煙突から煙が立ち上っている。
コテージの周りにはアジサイ、石楠花、あやめ、オダマキなどの花々が雨に濡れて美しい。(写真下左2枚)
他のコテージも見事に管理され美しい植栽がなされている。エバーグリーンの広場を通し、
雨に霞んでエクスムーアの広野が広がっている。(写真下右) 雨で足元は最悪だが、飽きることなく散策する。
Luccombe Packhorse Bridge ラッククーム パックホース・ブリッジ
他にも美しい村の情報は幾つも仕込んであるが、この雨の中のドライブは億劫だ。最後に一つ、セルワーシーから霞んで見えた
辺りのLuccombeの村を訪ねる。ここにも茅葺屋根のコテージが幾つも見られる。そして、小さな村なのに立派な教会がある。
人っ子一人見当たらないが、質素ながら豊かな生活が感じられる。
この辺りの地図を見ていると、Packhorse Bridgeの文字が目に入る。調べてみると、石で出来た荷馬1頭、あるいは、
荷馬車が通れる程度の狭いアーチ橋で18世紀までの通商路のことのようだ。今までにも幾つか見てきたが、この名は始めて知った。
Packhorse Bridgeをイメージしていただくのにピッタリの写真を
transport routes
で見つけた。(写真下右から2枚目)
Horner Water川に沿って走って行くとA39に出るまでに3つのパックホース・ブリッジを見ることができた。
ご覧の通り馬の背に振り分けた荷物がぶつからないよう低い欄干になっているのだ。その昔、この道を通った人々に思いを馳せる。
また、こうした古いものを護り残すイギリス人に傾倒する。
A39を西進すると写真下右の標識に出合う。"Gradient 1 in 4"とは”勾配 25%”、すなわち、1000m進むと
250m上がることを意味する。これはかなり厳しい坂道だ。ちなみに、日光のいろは坂の最大勾配でも13%だから、
その凄さがお分かりいただけよう。勾配だけでなくかなり厳しいヘアピンカーブが続くのでキャラバンなどは有料道路を通るよう
推奨されているが、私はこんな悪路が大好きなのだ。下りは04年と今日の2回経験したが、登りは初めてなので期待したのだが
、下りの方がスリルを感じる。
ON THE STEP オン・ザ・ステップ
Southcliffeに戻り明日の帰国に備え荷造りをする。沢山のお土産も何とか納まりそうで一安心だ。
さて、AndyとSueが私達の09年の旅最後の晩餐のために予約してくれたのは"ON THE STEP"だ。
Andyが地図で説明してくれるが、昨夜の散策で店の前を通ったので直ぐに分かった。名前のまんま、階段の脇にある店だ。
店構えも調度も質素な店だが、客の入りが良い。満席なのに次々に客が訪れ、断られて帰って行く。何だか良い気分だ。
オーダーはスターターのメニューに"River Yealm Oyster with shallot vinegar"を見つけ、迷わずチョイスする。
River Yealmはこの旅の初めに訪れたPlymouthの近くに注ぐ川だ。当地ではお目に掛かれず、ここで出合うとはご縁を感じる。
スターターのもう一品は"Goats cheese salad with sesame seeda, local leafs and a balsamic dressings"だ。
メインの1つは"8oz sirloin Steak (Brightly farm, Umberleigh)baby vegetables, triple cooked chips, beetroot puree
and deep fried courgette flower"をオーダーする。Umberleighはローズムーア・ガーデンに程近い村だ。地産地消だ。
もう1つのメインは"Wild line caught Turbot fillet(Ilfracombe)cooked 3 ways, pea and white truffle
puree,triple cooked chips and homemade tartar sauce"だ。いずれも恐ろしく長い名前の料理を選んだ。
こんなに長いメニューを記せるのは、メニューを借りてメモしていたら、マネージャーが新品のメニューをくれたからだ。
何時ものことだが、どんな料理が出てくるのかは決して自信があるわけではない。
幾つかのキーワードを頼りに何となくイメージしているだけだ。
結果として今宵は良い選択をしたようだ。エールビールに始まり、赤ワインで締める。全てを美味しくいただいた。
チップもはずんで心地良い帰り道は雨も上がっていた。楽しかった旅も明日で終わりだ。様々な出来事を思い返しながら眠りに就く。
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