6. ランドスケープ・ガーデン 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
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今回から様々なガーデンスタイルについて述べてみよう。
最初はイギリスで生まれたランドスケープ・ガーデン(Landscape Garden)だ。
前回述べたように18世紀に貴族の子弟は家庭教育が終わるとグランド・ツアーという大陸周遊の旅をする慣わしがあり、
イタリアの起伏のある風景に憧れ、お土産として持ち帰ったイタリアの風景画を自分の庭に再現したいと願った。
また、庭を囲う整形式庭園はあるがままの自然を愛する英国人の心と相容れないとする声や、
「自然は直線を忌み嫌う」という考え方が生まれてくる。
こうした背景から生まれてきたのがランドスケープ・ガーデン(英国式風景庭園)だ。
ピクチャレスク・ガーデンあるいは非整形式庭園とも言われる。
ランドスケープ・ガーデンの造園家としてウィリアム・ケントやランスロット・ブラウンなどが知られている。
彼らはそれまでの整形式庭園を壊し、湖を掘り丘を築き森を造るなど自然らしく設計した庭を造ったのだ。
あくまでも「自然のまま」でなく「自然らしく」造られたところが味噌なのだ。
Scotney Castle 2002 居城を廃墟にしてしまった 新しい館からの眺望も素晴らしい |
Fountain Abbey 2005 修道院の遺跡を取り込んだ 広大なランドスケープガーデン |
Sheffield Park Garden 2002 瀟洒な欄干の橋からお館を望む 湖さえ新たに築いてしまう |
庭内には川や橋、滝や噴水、廃墟や洞窟、神殿や寺院、四阿などを点景(focal point)として配し、
くねくねと曲がる小径を巡りこれらを回遊して楽しむ設計だ。ゆえに回遊式庭園とも呼ばれる。
橋はアーチ型石橋であったり、欄干の装飾が見ものであったりする。
洞窟は避暑の目的で造られたものだ。岩から水が湧き出し泉となり涼しさが演出される。
同じ洞窟でも冬の氷を夏まで蓄えておくアイスハウスなどと言うものもある。
避暑用の四阿はサマーハウスと呼ばれ萱や竹を使って通風を良くしている。
神殿や寺院も半端ではないスケールだ。
廃墟は人工的に造ったり、ヘンリー8世による「修道院の解散」や
「ピューリタン革命」によって壊された修道院や城を取り込んだりした。
中には自らが住んでいた城を壊し庭に取り込み、これを見下ろせる丘に新しい館を建てた城主までいたのだ。驚きのスケールだ。
これらの庭は200年の歳月を経て正にピクチャレスクであり、その館と共に多くの映画のロケ地としても知られるところだ。
Stourhead House & Garden 2004 避暑用の洞窟 岩からの湧水の泉も 岩窓から望む湖水も涼を運ぶ |
Chatsworth 2003 180mものカスケード 90mも吹き上がる噴水 水源は丘の上の貯水池 壮大な発想だ |
Killerton House 2004 丘の上に建てられたサマーハウス 壁には竹を使って風通し良く設計 |
もちろん18世紀以前のフォーマル・ガーデンやトピアリー・ガーデンが全て壊されたわけではなく、
古くは400年の歴史を誇るガーデンが今なお健在である。
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