7. コテージ・ガーデン 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
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前回述べたランドスケープ・ガーデン(Landscape Garden)をイングリッシュ・ガーデンとする説もあるが、
イングリッシュ・ガーデンとして多くの方がコテージ・ガーデン(Cottage Garden)を思い浮かべるのではないのだろうか。
コテージ・ガーデンが登場するのは19世紀末のことだ。
貴族が競って造ったランドスケープ・ガーデンだが18世紀末には様々な批判が出てきた。
ランドスケープ・ガーデンには花の要素が少なかったことも批判の一つだったようだ。
この時期は貴族が遣わしたプラント・ハンターによる植物の多様化や、産業革命による富裕層の出現などと重なる。
富裕層は都市近郊に家を建て貴族に対抗し庭を造るが、敷地は限られていたため、再び花壇やテラスが復活する。
プラント・ハンターによりもたらされた異国の珍しい植物が多用され、品種改良が盛んに行われ華やかな花が取り入れられた。
これらの庭は庭らしい庭(ガードネスク)と呼ばれた。(ヴィクトリア様式とも呼ばれる。)
Chirk Castle 2005 ゆるやかに蛇行する坂道の上に 様々な潅木に囲われて静かな佇まい |
Muncaster Castle 2005 ウッドランドガーデンの一角 紫陽花の花が鮮やかに咲く斜面に |
Mellerstain House 2005 お館の北側の森のOld Thatched Cottage 夏の花が伸び伸びと育っている |
しかし、19世紀末になるとそんな華やかな庭に対し、より自然なイギリス古来の草花などを取り入れた素朴な庭が受け入れられるようになる。
正に歴史は繰り返されるの感がある。
コテージとは田舎家のことだ。茅葺の家の周りに野菜やハーブなどとともに昔ながらの野草や宿根草などを植え込んだ
自然で心和む庭がコテージ・ガーデンと呼ばれる。(エドワード様式とも呼ばれる。)
コテージ・ガーデンのスタイルを確立したのが画家のガートルード・ジーキルと建築家のエドウィン・ラチェンスの二人だ。
20世紀始めのことである。
Selworthy 2004 村全体がこんな茅葺屋根の家だ バックヤードにも花が満開だ |
Cary Fitzpaine Farm 2005 ファームハウスのエバーグリーンの中庭 納屋の石壁沿いに様々な植栽のボーダー |
Chirk Castle 2005 賑やかなティンバーハウス その雰囲気に相応しい植栽だ |
ガートルード・ジーキルはウィリアム・モリスやジョン・ランキンスらの
アート・クラフト・運動に傾倒し、「色彩計画(color scheme)」と呼ばれる植栽方法を生み出した。
color schemeとは、隣り合う花同士の花色・葉色・樹皮の色などがバランスよく配置されて始めて個々の花が美しく見えるという論だ。
無論、色のみでなく花や葉の形・背丈・季節さえも周到に計画された植栽である。
ジーキルはこの論に則り多種多様な庭を楽しめる今日のアウトドア・ルーム・ガーデンにつながる庭を多数造った。
また、園路や塀・壁に沿って植え込みをするボーダー・ガーデンの確立など現代のイングリッシュ・ガーデンに多くの影響を残している。
Hestercombe Gardens 2002/2005 ジーキルの植栽計画により復元した庭 その色彩計画は見事だ |
Sissinghurst Castle Garden 2002 アウトドア・ルーム・ガーデン 庭を屋外の部屋に見立て異なる植栽を |
Chillingham Castle 2005 高さと奥行きのあるボーダーガーデン 花色・葉色・質感・開花期・背丈などを考慮 |
一般市民が自宅の庭で様式に拘らない個性的で自由な庭を作ろうとするとき、
自然で小ぢんまりとした温かみのあるコテージ・ガーデンを目指すのはうなずかれるところだ。
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