3. フロントガーデンとバックヤード 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
写真説明のガーデン名をクリックするとガーデン紹介にジャンプします。
先月、家族で楽しみ、そこに生活があり、なおかつ、社会に開かれたガーデンを心がけたいと結んだ。
英国ガーデンに見る「公」と「私」の好例が、「フロント・ガーデン」と「バック・ヤード」だろう。
英国の住宅は多くがセミ・デタッチド・ハウス(2軒長屋)やテラス・ハウス(3軒以上の長屋)という専用の庭を持つ連続住宅だ。
(飽くまでも庭付きにこだわる。日本でいうマンションなどはハウスと呼ばれずフラットという。)
そして、一般に敷地は細長く、道路に面した部分をフロント、裏側をバックと呼ぶ。
フロント・ガーデンは玄関へのアプローチであり、その両脇は美しくガーデニングされ、
ポーチにはコンテナが置かれたり、ハンギング・バスケットが吊るされていたりする。
近隣との調和を図り、手入れが悪いと苦情が来たり、街によっては統一した植栽がなされたりする。
フロントに面した部屋も綺麗に飾られている。こうして街の景観を守るのだ。すなわち社会とつながる「公」の部分だ。
B&B "Riverside Farm" 2005 その名の通り川沿いの道から この花園を抜け奥の白い玄関ドアーに向かう 花々の色合いとハーブの香りを愛でながら |
North Yorkshire Moors Kilbur村 2005 このお宅には脱帽・ため息だ バック・ヤードはいかばかりだろう こんなフラワー・ガーデンが私の理想だ |
B&B "Horsleygate Hall" 2003 Peak Districtらしく高低差を生かした庭 L字の階段の両側から花が覆い被さる National Garden Scheme登録のガーデン |
一方、バック・ヤードはまったくのプライベートな部分で高い塀で囲われ、滅多なことでは垣間見ることはできない。
バック・ヤードは一般にフロント・ガーデンより広く、キッチンやダイニングとつながっている。
一面に芝が敷き詰められ、塀にはバラやクレマチスが這い、塀に沿ってボーダー・ガーデンがあり、
ウッドデッキにはパラソルとテーブルと椅子、随所にオブジェが隠され、奥にはキッチン・ガーデンがあり、温室や作業小屋そして物干し場がある。
ここでは「子供が遊び」、「食事やお茶をし」、「読書をし」、「ガーデニングをし」、「時に友を招き」、「洗濯物を干す」場所なのだ。
すなわち家族が「生活」し「楽しむ」ための「私」の部分だ。バック・ヤードを裏庭と考えるのではなく、もう一つの部屋と考える。
だから、こちらに力をいれ充実を図るのが英国流ガーデンなのだ。
Londonのプライベート・ガーデン 1999 狭い庭だが広く見せるアイディアが満杯 National Garden Scheme登録基準の ”ゲストを45分楽しませる庭”を満たしている |
B&B "Shortgate Manor Farm" 2003 緑の中の秘密の小径 あのコーナーの先には何が? ワクワクする 夢のあるバックヤード |
B&B "Embleton House" 2004 芝の広場を囲む樹木と潅木 その手前は背の高い草花とグラス かくれんぼをしたら隠れる場所が沢山で楽しそう |
これが正に、私をガーデニングに陥れたイングリッシュ・ガーデンなのだ。
住宅(土地)事情の異なる日本でそのスタイルを真似するのは難しいし、無意味なことだが、その考え方は見習うに値するものと思う。
社会とつながるガーデニングを考慮しつつ、生活を楽しむためのガーデニングを家族で行うなら、どんなにか明るい家庭になることだろう。
こうした個人のガーデンとは別に英国には様々なスタイルのガーデンがある。
その数と多様性は長い歴史に育まれたものであり驚嘆に値する。The National Trustという組織も特筆すべきものだ。
そうしたガーデンを訪れることも私の英国旅行の大きな楽しみでもある。
次回は英国ガーデンの変遷を振り返ってみよう。
テーマ 一 覧 |
第1回 | 第2回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 第10回 |