第3日 6月 1日(金) 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
今日の行程 Danehurst House --- Chiddingstone Village --- Sissinghurst --- Scotney Castle --- Great Dixter---
Godinton House & Gardens --- Wye Crown --- Folkestone White Horse --- Danehurst House
今日の走行距離 253km
今日の万歩計 19,000歩
出発時点の気温 16.5℃
ダーンハースト・ハウス Danehurst House
昨夜はホストのマイケルからアイスキューブをいただき、美味しくロックを飲んでぐっすり眠れた。
イギリスではスコッチを水割りやロックで飲むことはないし、その他の飲み物も氷を入れて飲むことは少ないようだ。
したがって、冷蔵庫にアイスキューブが常備されていることはほとんどない。昨夜も「アイスキューブを欲しい」とお願いすると、
アイスペールを食器棚から探し出し、製氷皿のキューブを取り出してくれた。「サンキュー」を言ってアイスペールを受け取った途端に
取っ手が抜けて器が落ち、氷が床に散らばった。他には氷はないのだ。マイケルと共に拾い集め、洗って使ったのだった。
ここの朝食は前の晩の就寝前にオーダー票をドアの外に出しておくシステムだ。私はソーセージを抜いてポテトを追加した。
妻はスモークト・サーモン+スクランブルエッグをオーダーした。ご覧の通りホットミールはプレートから溢れんばかりだし、
スモークト・サーモンも「よろしければ御代わりもどうぞ」とのことだが、とてもそんなにはいただけない。
少し狭い棚にはジャムやマーマレード,蜂蜜が綺麗に並べられている。手作りのものが多い。例のマーマイト(Marmite)も交ざっている(写真下左)。
ミルクピッチャーに掛けられたナプキンがお洒落で感じが良い(写真下左から2枚目)。
ところで、私のお気に入りの携帯用めがねが見当たらないのだ。30日にB&Bに向かうM25の車内で地図を見た時に間違いなく使用した。
その後どこにも寄らずB&Bに到着し、諸々の荷物と一緒に部屋に持ち込んだはずなのだが、部屋にも車にも見つからず、
その内出てくるだろうと高を括っていたが、とうとう見つからず仕舞いだ。コンパクトで気に入ったデザインなので2本目のものだけに残念だ。
こんなこともあろうかと予備のめがねを用意してきたのは正解だ。
チディングストーン村 Chiddingstone Village
今日の最初の訪問地はチディングストーン村だ。
"One of the most beautiful and oldest villages in Kent"とも"One of the most attractive hamlets in Kent"とも称され、
"The most perfect surviving example of a Tudor village in the county"と呼ばれる村全体がナショナル・トラストの管理にある村だ。
映画「眺めのいい部屋(A Room with a View)」にも登場した村だという。
ローカルロードを進むと突如として小さな村に入る。わずか100m足らずの道路わきにハーフ・ティンバーの建物が6、7軒並んでいるだけだ。
あっという間に通り過ぎ、Uターンして戻る。素敵な通りに車を止めるのは景観をスポイルしそうで憚られる気もしないではないが、
他に止める所もないし、他にも沢山止めてある。通りの南側に16、17世紀に鉄工業で栄えたチューダー様式の村がそのまま残っている。
通りと建物の間の通路には当時のままの玉石の石畳が残っている。
郵便局の看板には"1453 AD Chiddingstone Stores and Post Office"と記されている。その脇の木戸が閉まった通路の上には
"1453 Burghesh Court"の看板が吊る下がっている。まだ営業時間になっていないがTea Room、Restaurant、Shopがあるようだ(写真下左から2枚目)。
その隣の3つの破風が目を惹く(写真上右から2枚目、下左)。真ん中の破風は迫り出していて、右の破風には出窓がある。そのガラスが歪んでいて時代を感じさせる。 通りの一番西の建物はキャッスル・イン(Castle Inn)だ。その名の通り西側には広大なチディングストーン城(Chiddingstone Castle)の敷地が広がっている。 立派な城門にはダイアモンド・ジュビリーのイベントのお知らせが掲げられている(写真下左から2枚目)。
通りの北側にはセント・メアリー教会(The parish church of St. Mary)がある(写真上右)。その歴史は1000年前に遡るという。
墓地門(Lych Gate 写真下中)から可愛らしいプライマリー・スクールの生徒たちが次々と出てきた。朝のお祈りでもあったのだろうか。
郵便局に入ってみる。 村の絵葉書でもあればと思っていたのだが、なかなかに品揃えが良い。ポストカードとバースデーカードを求め、
更に物色していると素晴らしいマグカップを見つけた。今年の買い物候補の一つがマグカップだったのだ。
右の写真のクラシック・プー(Classic Pooh)のマグカップだ。左の直径7.5cm、高さ、9.5cmのスリムな方を2つ求めたら、現品限りだという。
もう一つあった右の直径8.5cm、高さ9cmとペアで求めたら、こちらは缶の容器に入れてくれた(写真下右2枚)。
書かれているフレーズは"some friends are smaller than others"、プーさんの優しさが感じられる。とても良い買い物ができて得した気分だ。
シシングハースト城 Sissinghurst Castle
シシングハースト城に遣ってきた。都合4回目の訪問だ。
”世界中のガーデナーの聖地”とも”イギリス人が最もあこがれる庭”とも称される。走りながらも期待感に胸は躍る。
受付の隣の展示場の建物はケント地方特有のホップ乾燥所(Oast Hhouse 写真右)だったものだ。
シシングハースト城の建物は15世紀の濠に囲まれたマナーハウスがフランス人捕虜の収容所などを経て荒れ放題になっていたものを
1930年に詩人のヴィタ・サックビル・ウェスト(Vita Sackville-West)と作家で外交官のハロルド ・ニコルソン(Harold Nicolson)夫妻が購入し、
ガーデン造りを始めたものだ。主にレイアウトなどをハロルドが植栽計画をヴィタが担ったという。
二人はガーデン造りに当たってコッツウォルズのヒドコート・マナー(Hidcote Manor)のアウトドア・ルーム方式をお手本にしたということで、
ここもレンガの塀やイチイのヘッジでセパレートされた個性的な約10個のルームがある。ルームが変わるごとに植栽が変わり、新しい発見があるという仕組みだ。
1976年にナショナル・トラストの所有となった。
エントランスをから"Long Library"と"Main House"の間のアーチ門を潜ると"Front Courtyard"に出る(写真上右から2枚目)。
正面にタワーが聳え、高いレンガ塀と建物に囲まれた芝生の美しい中庭だ。塀も建物の壁もつる性植物が見事にクライミングしている。
写真上左はMain Houseの壁のセアノサス、羨ましくなる。上左から2枚目はアーチ門の周りのバラ、下左2枚はLong Libraryの壁のバラ、
下右から2枚目は南側の塀をクライミングするモンタナとつるアジサイで、その下には"South Border"がある。
その反対の北側の塀沿いには"Purple Border"がある。素晴らしい光景だ。人気を示す沢山のゲストを避けつつ2回りする。
南側の青いドアー(写真上右から2枚目)を入るとローズ・ガーデン(Rose Garden)だ。塀とイチイのヘッジに囲まれた長方形の整形式ガーデンだ。 西の端には半円形のテラスがあり、素敵な形のベンチがある。後ろの塀にはクレマチスがクライミングしている。 中央にはヒドコート・マナーのロンデルと同じようなイチイのヘッジに囲まれた円形の芝のスペースがある(写真下右から2枚目)。 陽だまりのロンデルもこの2つに倣ったものだ。東の端にはオーナメントがある(写真下右)。ハロルドがデザインしたもので私好みだ。
どこから眺めてもタワーやハウスのチムニーが絶好のフォーカルポイントになるので、気がついてみると同じような写真だが、
前景の植栽はそれぞれ違う。実に多彩な植栽だ。ローズ・ガーデンではあるが、バラよりも他の植物のほうが多いくらいだ。
それでいながら、バラが主役であることに変わりはない。ブッシュや宿根草も背が高く、厚みがあり重厚感がある。
このローズ・ガーデンからも幾つかのルームに繋がっている。写真下右から3枚目は"Tower Lawn"へ、写真下右は1932年に造られた"Yew Walk"を望んでいる。
他にも"Lime Walk"と"Cottage Garden"に繋がっている。どちらに行こうか迷うのも楽しい。
"Cottage Garden"は"South Cottage"(写真下左2枚)の南に広がる赤と黄色を基調としたホット・ガーデンだ。色鮮やかな植栽には目を奪われる。
一般的にイングリッシュ・ガーデンといわれるところのナチュラルな植栽のコテージ・ガーデンとは趣が違う。
コテージの壁にクライミングするバラはデビット・オースチン(David Austin)の"Mme Alfred Carriere"だ。
ガーデンの中央にフォーカルポイントの4本のイチイの木が立っている(写真下右から2枚目)。その真ん中に置かれたコンテナの植栽もホットだ(写真上右)。 ここでもタワーを入れたアングルが多くなった。艶やかな花色ばかりに目が行きがちだが、花の形、葉の色・形も様々で考え抜かれた植栽だ。 他と比べると小さなルームだが、それを感じさせない存在感がある。
"Lime Walk"はハロルドがデザインから植栽まで手掛けたルームだという。50m余りのイチイの生垣に囲まれた細長いエリアに
ライムの木(ミカン科のライムではなく西洋菩提樹のこと)を2列の並木にし、両脇はスプリングカラーが植え込まれている(写真下左)。
前回は08年の4月にブルーベルを目的に旅したのだが、このスプリングカラーを目にした時の感動が蘇える。
左から2枚目はLime Walkの西のエンドの半月形の部分のモニュメントだ。直線的になりがちなルームガーデンに、
こうした曲線を取り入れる手法はガーデンにソフトな印象を与える。
Lime Walkの東のエンドからは"Nuttery"と"Moat Walk"が平行して東に伸びている。白藤が余りにも鮮やかに目を惹いたのでMoat Walkを歩く。
白藤の前では記念写真を撮る人が多くなかなか順番が回ってこない。ここは1946年にヴィタのポエムが文学賞で得た賞金で造られたという。
Moat Walkというのは嘗ては屋敷を取り囲む濠(Moat)が通っていた場所だからだ。実際に今でも屋敷の東面と北面半分は濠が巡っている。
その濠の畔にモニュメントが置かれMoat Walkに奥行きを与えている(写真下右)。
ガーデンの南東角に"Herb Garden"がある。いつも私にインスパイアーを与えてくれるガーデンだ。ここは藤色の藤が満開だ。
ライオン像が支えるコンテナは以前はタイムだったが、セダムに変わっている(写真左から2枚目)。
座席がハーブのベンチも以前はタイムだったが、今は矮性のカモミールに変わっている(写真右から2枚目)。「座らないでください」と控えめな表示があった。
これだけのゲストが次々座ったのでは溜まったものではないだろう。私のアイディアの手摺部分にタイムベッドを作ったベンチではその心配はない。
果樹園(Orchard)を横切ってシシングハーストで最も有名で世界中に最も影響を与えたというホワイト・ガーデン(White Garden)に向かう。
ヴィタとハロルドは「ガーデンの半分は果樹園にしておきたい」と考えていたという。ガーデンマップを見ると丁度半分は果樹園だ。
その理由は「ミツバチにリンゴの花を利用して蜂蜜を作らせる」ためだったようだ。もちろん果実を食べ、ジュースを搾り、ジャムを作り、
サイダーを造ったことだろう。生活と共にあるガーデンがイギリス流というものだ。
シルバーリーフに囲まれて婦人像は今年も静かに迎えてくれた(写真下左 1935年からここにいらっしゃるとか)。
ホワイト・ガーデンの目玉である"Canopy"と呼ばれるパーゴラのランブラー・ローズには今年も早すぎたが、
フロックスの眩しいような白はこれだけでホワイト・ガーデンだ(写真下左から2枚目)。このランブラーを見るために何時かは7月に訪れたい。
ほかにアイスバーグも満開だ。カラー、グラジオラス、アイリス、ポンポンダリア、カンパニュラ、秋明菊、ポピー、マーガレット、エリンジウム、
クレマチス、クランベなどがスタンバイしている。グラス類も効果的に使われている。
ここがホワイト・ガーデンになったのは1950年からのことだという。それまではローズ・ガーデンだったのだ。
そして、パーゴラが設置されたのは何と1969年のことだという。ヴィタもハロルドも亡くなった後のことだ。
しかし、パーゴラの真下の置かれた壷(写真下右)は1937年からあるのだという。
この項で年代にこだわって記しているのには訳がある。ガーデンが生き物だということ。時間と共に変わっていくということ。一朝一夕には出来ないということ。
そこに生活があるということ。ガーデニングは現在進行形だということを伝えたかったからだ。私のガーデニング哲学だ。
島根県の有名な日本庭園に行って驚いたことがある。庭に足を踏み入れることは出来ず、ガラス越しにしか見られないのだ。庭の風に触れることは出来ないのだ。
そこに人の姿はないのだ。創設者はこよなく庭を愛し、情熱を傾けたというが、その庭は今は死んでいるように見えた。
ガーデンにはオーナメントも重要な要素だと考える。その点でもシシングハーストは最高だ。心憎いシチュエーションとバックグラウンドで配置されている。
上左2枚はローズ・ガーデンにあったと記憶している壷とモニュメントだ。
ガーデンがホワイト・ガーデンなら建物はタワーが最も人気だろう。今回も行列が出来ていた。一度上っているので今回は見送った。
どこから見ても美しいが、タワー東側の"Twer Lawn"から間近に見るタワーは迫力がある(写真上右2枚)。
美しい草花の写真をお見せしよう。上左からホワイト・ガーデンへのゲートの一つ"Bishop's Gate"にランブラーするバラ。
2、3枚目はホワイト・ガーデンのアストランチアとセントーレアだ。右がローズ・ガーデンのオリエンタルポピー、なんともシックな色合いだ。
下は左がPurple Borderのルピナス。シシングハーストのガーデナーはカラースキムを"clever mix of pink , blues , lilacs and purples"と説く。
お手本が良いから良く理解できる。
2、3枚目はFront Courtyardの南の塀のアジサイとMain Houseの壁際のオステオスペルマムだ。
コンテナは元は違う用途だっただろうと思われるが、良い雰囲気だ。
右はローズ・ガーデンからYew Walkへのゲート付近の植栽だ。花は奥からムクゲ、バラ、アリウム、オダマキだ。カラースキムのお手本になる。
スコットニー城 Scotney Castle
スコットニー城は”世界で最もロマンティックな城”と謳われ、
ナショナル・トラストでも常に入場者ランク上位を占めるプロパティーだ。。
ここにはオールドとニューの2つの城がある。オールドは14世紀の城で濠に囲まれた長方形の4隅に円形塔(Circular Towers)を持つ城だったが、
16世紀には南の塔のみを残すだけになっていた。幾多の手を経て1778年にエドワード・ハッシー(Edward Hussey)が所有者となる。
エドワードは1835年から新しいハウスをオールドキャッスルを見下ろす高台に建築する。これがニューキャッスルだ(写真下左2枚)。
1970年に末裔のクリストファー ・ハッシー(Christopher Hussey)が亡くなり、エステートとガーデンがナショナル・トラストに寄贈され、
その後もハウスには夫人のベティ(Mrs Betty)が住まわれていたが、2006年に亡くなられハウスも寄贈され、2007年より一般公開されている。
ハウスの片隅に三日月形の見晴台があり、そこからのオールドカッスルの眺めが素晴らしい。シャクナゲやツツジ、カルミアなどが咲き乱れ
うねるように重なり合う斜面の遥か下に円形のタワーがロマンチックだ(写真下右2枚)。
見晴台の脇に小さなガーデンがありバラやハーブ、石楠花などが見事に咲いている(写真下左)。ベンチで芳香を楽しむ。
緩やかなスロープをゆっくり下っていく。子供連れファミリーや犬を連れたカップルなどが和やかにエバーグリーンの芝の上でピクニックをしている。
歩く毎に景色が変わっていく。3度の訪問がいずれも6月なのだが、今回が最高の美しさだ。石楠花の大きさには驚かされる(写真下中2枚)。
下り切って濠に突き当たる。橋の手前の濠の水に映る円形塔の姿がまたロマンチックだ(写真下右)。
橋を渡ると城の前庭で円形のハーブ・ガーデンになっている。様々なハーブがこれまた満開で芳香が漂う(写真下左)。心弾む光景だ。
廃墟の壁を覆う白藤が風に揺られ手招く。招かれるままに白藤のアーチを潜って裏に回る。藤がクライミングする廃墟の壁は元は
"Gatehouse"だったもので、新しいハウスが出来る1836年までは使われていたのだ(写真下右3枚)。しかし、エドワードはランドスケープ・ガーデンの
フォーカルポイントとすべくGatehouseを半分崩壊してしまったのだ。そして、この廃墟の城と濠の水、丘の木々が織り成す文字通り絵のような
ピクチャレスク・ガーデンをデザインしたのだ。なんとも剛毅なエピソードが好きだ。
前庭に戻り白藤をバックに写真を撮っていると「お撮りしましょう」と声が掛かる。ありがたくお願いしたが、例によりほめられた構図ではない。
素晴らしい藤をバックに入れて欲しかったのだが・・・。
ハーブ・ガーデンの脇のベンチで陽光を浴びながら一休みする。藤の香りも混ざって何とも至極なひと時だ。
西の円塔の廃墟が素晴らしいフレームとなり良い写真が撮れたと自画自賛(写真下右から2枚目)。
帰りは花木の間に見えかくれするハウスを見上げながらの散策となる。
カフェテリアでアイスクリームを楽しみながら後の予定を考える。2つのナショナル・トラストでのんびりしたので時間が押している。
リストアップしたガーデンを1つスキップすることにする。
グレート・ディクスター Great Dixter
グレート・ディクスターは2度目の訪問だ。正直私は前回の印象は余りよくない。
しかし、妻は「もう一度みたい」と言うので遣ってきた。
エントランスからハウスに向うアプローチは一直線だ。進んでいくと愉快なほどに傾いた玄関のポーチが見える(写真下左 見た目にはもっと傾いている)。
この建物は15世紀半ばのもので、1910年にこれを購入したナサニエル ・ロイド(Nathaniel Lloyd)は別にケントに所有していた似たような
16世紀の建物をここに移し、2つを合体して復元する工事を建築家のエドウィン・ラッチェンス(Edwin Lutyens)に依頼したのだ。
したがってこのマナーハウスは新たに加えられた部分を含め3つの建物が一つになったものだ。
ラッチェンスは有名な園芸家のガートルード・ジーキルと共同で多くのガーデンを造り、コテージ・ガーデンというスタイルを確立した人だ。
そのラッチェンスがデザインしたサンクン・ガーデン(Sunk Garden)が写真上右と下3枚だ。ハウスの北側に位置する。
コンテナも取り入れた植栽は厚すぎる感じはするが、その多彩さはさすがだ。
写真上右の背景の"White Barn"や下左から2枚目の背景の"Great Barn"と"Oast House"など相当古い建物に囲まれている。
写真下右はアプローチからのサンクン・ガーデンへの入り口。イチイのヘッジが厚く高い。ガーデンのいたるところに巡らされている。
ハウスの東側に一段高くした長方形の部分をイチイのヘッジで3つに分割したガーデンがある。このようにヘッジやレンガの塀でガーデンを分割する手法を
アウトドア・ルーム・ガーデンといい、ラッチェンスがガートルード・ジーキルと共に確立したものだ。
最初の部屋は"Peacock Topiary"と名付けられている。四角錐台の上にクジャクが乗っている形のトピアリーが18並んでいる。
見上げるほどの高さがある堂々たるものだ。Peacock Topiaryと謳っているからクジャクと思えなくはないが、それにしてはかなりメタボだ。
どちらかというとリスに見える。トピアリーとはそうしたものだ。何に見えるかはゲスト次第、製作者は製作者なりに楽しんでいれば良い。
次の部屋は"High Garden"と名付けられている(写真下左3枚)。イチイのヘッジで囲まれた正方形のエリアを十字の通路で4つに仕切り、
それぞれ異なる植栽を施している。植栽は濃密を極める。しかも、通路脇にも背丈があり、葉張りの大きなものが植栽されているので、
それでなくとも狭い通路が塞がれていてしまう。すっきり感がない。
現在のこのガーデンはナサニエル ・ロイドの息子でガーデンライターとして有名なクリストファー・ロイド(Christopher Lloyd 2006年没))が
1954年にここに戻り、ナーサリーを経営しつつ植栽をし直したものだという。そのナーサリーでは変わった植物を多く扱ったという。
解せないことに、クリストファーは幼少の頃ガートルード・ジーキルの指導も受けているとのことだが、ジーキルの説く"カラー・スキム"は
学ばなかったのだろうか。強烈な色彩とボリュームに圧倒されるばかりだ。
もう一つの部屋は"Orchard Garden"だ。イギリスのガーデンでは定番だが、花色の少ない此の手のガーデンは好みでない。
ヘッジを潜り階段を下りると壁に沿って"Long Border"が連なる(写真上右、下左2枚)。ここでも色彩とボリュームは圧倒的だ。
ここまで徹底するとそれはそれで受け入れるしかない。凄いエネルギーを感じる。それにつけても、一つひとつの植物の活きの良さ、伸びやかさには呆れるばかりだ。
ここまでガーデンを巡る間、常にハウスが視野に入ってくる。これはラッチェンスお得意のコテージ・ガーデンの一例かもしれない。
シシングハーストの項で述べた”生活と共にあるガーデン”を考えると、そこにハウスは付き物なのだ。
ハウスの裏側に回ると、嘗ての鶏小屋(Chicken House)の壁を取り払って開廊(Loggia)にした建物がある(写真上右から2枚目)。
鶏小屋とはいえ大きなものだ。ここもバラなどのつる性植物や潅木、宿根草で覆われそうなほど濃密な植え込みだ。
開廊を通り2つの可愛いアヒルのようなトピアリー(写真上右)の間を抜けると"Topiry Lawn"に出る。
こちらも屋根が波打つほど古い家畜小屋(hovel)の前の草原に幾つものトピアリーがある。何を模ったのか想像するのも楽しい(写真下左から2枚目)。
鶏小屋といい家畜小屋といい、こうした古いものを壊さず、巧みに再利用するのもイギリス人の真骨頂なのだ。
家畜小屋の裏に"Exotic Garden"なるものがあったが、ここの植栽にも首を傾げる。
Long Borderへ戻る石の階段が素晴らしい。3つの円を組み合わせたデザインだ。植栽はセダムとエリゲロンと芝。素晴らしい(写真下右)。
前回の印象から比べると評価を上げたが、色彩感覚は相容れないものがある。細かなところの手入れも今一つの感が残る。
ゴディントン・ハウス&ガーデン Godinton House & Gardens
初めて訪れるゴディントン・ハウス&ガーデンに遣ってきた。
この地区では大きな街であるアシュフォード(Ashford)の中心まで3kmほどの郊外だが、A20からローカルロードに逸れると雑木林に囲まれ長閑なドライブだ。
ゲートを潜りエステートの敷地に入ると行く手を牛の群れに阻まれた(写真右)。ここでは牛が優先だ。道を空けてくれるのを待つのみだ。
右の写真の左辺に写っているのが、有名な延長300m余りもあるイチイの生垣(Yew Hedge)だ。”イングランドで最も長い生垣”といわれる。
ハウスの破風の輪郭に刈り込まれているのだ。(写真を拡大し「こんな形」をクリック)
ゴディントンは14世紀半ばにさかのぼる歴史を持つハウスだ。現在のハウスは1620年代に建てられたものだ。
赤レンガと白い窓枠がロマンチックな雰囲気を醸す。屋根のオランダ・スタイルの破風(Dutch Gables)の曲線が何とも優雅だ。
エントランスはハウス東側のテラスに繋がる(写真下左)。テラスを下りると広大な芝生(Terraced Lawns)が広がっており、
周囲は草花のボーダーが巡らされ、そこここに像が立っている(写真下左から2枚目)。
先ずはハウスの南にあるローズガーデンに行く(写真上3、4枚枚目)。生垣で囲まれたガーデンに花はちらほらといったところだ。
満開は月末くらいかもしれない。生垣が一部半円形に膨らんでいてそこに3つの像が立っている(写真下左3枚)。格調高いガーデンだ。
それにつけても植栽が厚い。健やかに伸び、小さな蕾をたわわに着けている。赤レンガに映える。写真上右の"Clock Tower"も優雅だ。
このガーデンは19世紀末からレジナルド ・ブロムフィールド卿(Sir Reginald Blomfield)によりデザインされたもので5ヘクタールの広さがある。
通路も幅広くゆったりしている。それ以外は一面芝生だ。ここの芝生は”There are no "Keep off the Grass" signs here”と謳っており、
自由に歩きまわれる。
素晴らしいイタリアン・ガーデン(Italian Garden)が現れた。大理石の柱廊(MarbleColonnade)を覆い隠すほどに藤が咲き誇っている。見事だ(写真下)。
日本の藤(Japanese Wisteria)という。円柱の間に立つ4体の像は4つの大陸(Four Continents)を表す像だという。
柱廊を潜ると細長い長方形の芝生の中に細長い"Persian Rill"とよばれる水路が伸びている。十字の中央部には大理石の噴水がある(写真上右から2枚目)。
突き当たりは一段高く半円形の開廊(Loggia)があり、石のベンチがある。両脇には像が立っている(写真下右)。
両脇は一段高いボーダーとなっている。入り口から見て左側のボーダーの中央にはサマーハウス(Summerhouse)がある。豪奢を極めるガーデンだ。
その隣が100m×50mはあろうかというウォールド・ガーデン(Walled Garden)だ(写真下左2枚)。植栽は半分は"kitchen Garden"で、
半分は芝の広場だ。大きな温室(Greenhouses)があり、ここにもサマーハウスがある(写真下左から2枚目 丸いポンドの後方)。
ここはデルフィニウムのコレクションが豊富で6月の末になるとそのボーダー(Delphinium Borders)がすばらしいのだという。
それを見られる頃にはイタリアン・ガーデンの藤は終わっている訳でガーデンというものは繰り返し訪れるしかない。
次は"Formal Lily Pond"だ(写真上右2枚)。60m×20m程もある大きなポンドだ。元は"Swimming Pool"だったものを改造したものだ。
また、形が良い。このポンドに限らず、このガーデンのデザインは巧みに曲線を取り入れている。それが優雅さを生み出しているのだ。
池の脇の柳の大木が水面に垂れて良い雰囲気だ。その脇の展望台(Belvedere)もプールの形と同じデザインになっている(写真下右)。
この旅で後に訪れるポートランド(Portland)産の石を使っているらしい。
ウォールド・ガーデンとリリー・ポンドの間にガーデンマップにも説明がない像があった。大きな木の下の芝生の中に馬蹄型のヘッジがあり、
中央のハーブの植え込みの中に男性の胸像(写真3段上右)が立ち、馬蹄型ヘッジの両端に踊る女性の像が立っている(写真下左2枚)。
リリー・ポンドとテラス・ローンの間に"Herbaceous Borders"が広がる(写真下左)。程よい高さにコントロールされた植え込みは、
明るく開放的で爽快感溢れる。このボーダーの主は写真上中の女神像だ。
"Pan Garden"と名付けられたガーデンがある(写真下右2枚)。ギリシア神話に登場する神・パンの像を中心に見事に刈り込まれたトピアリーが囲む。
パンは牧羊神ともいわれ笛(パイプ)が得意なのだという。(その姿は写真を拡大してご覧ください)
エントランスの前庭(Entrance Forecourt)に戻る。写真下左から2枚目の大きなカエデが4本植えられている。
このカエデのオータムカラーはネットの写真で見ると素晴らしい。秋にも訪れなければならない。
ハウスの前の小さなフォーマル・ヘッジの中の小さな馬の像がゲストを歓迎するように立っている(写真上右から2枚目)。
予定ではアウトレット(Ashford Designer Outlet)でのショッピングが入っていたが、優先したい予定が残っている。スキップして次に向かう。
ヒルフィギュア Hill Figure
イギリスにはホワイトホースに代表されるヒルフィギュア(丘絵)が沢山ある。石灰岩の丘陵地帯に画かれた地上絵だ。
石灰岩を露出させて画いた地上絵は、緑と白のコントラストが鮮やかで美しいが、定期的な保守作業を続けないと、風化・埋没して消滅してしまう。
題材は馬だけでなく、人や動物、十字架や紋章などもある。ミステリアスでありロマンと夢を誘われる。
ナスカの地上絵のように上空からではなく、向かいあった斜面や遠方など地上から見ることを意識して作られているのが特徴だ。
イギリス全土で見られるが、特に今回の旅のエリアに多く点在する。ということで今年の旅のテーマの一つとした。
19個をリストアップした中で14個を訪れることが出来た。
ワイ・クラウン Wye Crown
ワイ・クラウンは1902年にワイ 大学(Wye college)の学生によって
エドワード7世(Edward VII)の即位式を祝って造ったものだという。高さ52m、幅55mの王冠だ。イギリスでも王冠のヒルフィギュアは唯一のようだ。
A28からワイの街に向かうと道が開けたところで、迷ナビが右手前方の丘を指し「あれは何?」と言う。見れば紛れもなくワイ・クラウンだ。
まだ手前2km位のところだ。調べた限りでは現場近くにパーキングはないようだ。
ここで精一杯のズームアップで写真撮影をして今年のヒルフィギュア1号とする(写真右)。
フォークストーン・ホワイトホース Folkestone White Horse
フォークストーン・ホワイトホースは地元のアーティスト、
チャールズ ・ニューイントン(Charlie Newington)により2000年のミレニアム・ランドマーク(Millennium Landmark)として提案された。
というのも、イングランド南西部にはホワイトホースが沢山見られるのにケント州には一つもなかったからだ。
例により、賛否両論すったもんだの末、2002年に許可が出て2003年3月に完成したのだ。幅80.9m、高さ45.5mのホワイトホースだ。
特徴は30〜60cmの線で馬を描いていることだ。線の溝には石灰岩のスラブ(Chalk Slabs)を満たしてある。
ホワイトホースの見学場所については特に展望台とか見晴台があるところは稀だ。多くは路上から見ることになる。
特にフォークストーン・ホワイトホースの斜面の下はイギリスのドーバー(Dover)とフランスのカレー(Calais)を繋ぐ海峡トンネル(Channel Tunnel)の
ターミナル基地に占められていて車で良い見学場所を探すのは難しいようだ。ネットによれば、”M20やA20の路肩に止めて、
駐車違反で捕まらないよう気をつけろ”などの記事も見られた。
とりあえずA20のビューポイントだという場所を目指す。ナビ子ちゃんの案内でピンポイントで探し当てたが、ポリスの姿がある。
通り過ぎてM20とのジャンクションに入ると車窓からホワイトホースが見え隠れするが、止まることも出来ない。
仕方なく、ジャンクション付近のスーパーマーケットのパーキングがポイントとの情報があったのでそこに向かうが、
モーターウェーの防音壁が邪魔で脚立でもないと見えない。
もう一つのポイントは少し離れるが市内の公園だ。ようやく躍動感のあるホワイトホースに出合えた。少し風化が進んでいるようだ。
生憎小雨が振り出したが、今年のヒルフィギュア2号も撮影できた(写真上右)。
スケジュールの進行具合ではライ(Rye)の街も予定していたが、すでに18時を回ってしまった。こちらはパスしよう。
もう一つ、今日のお楽しみはナショナル・ガーデン・スキムのガーデンで21時までオープンしているガーデンを見つけてあったことだ。
しかも、"a glass of wine"が追加料金なしで提供されるという。
2007年の旅で"King John's Lodge"に宿泊した時のことだ。丁度このB&Bのワインサービスのイブニング・オープンの晩に遭遇し、
遅くまで賑わっていたのを経験している。ワインをいただきながら、オーナーやゲストと交流できたらどんなに楽しいことだろう。
一度体験したいものだと楽しみにしていたのだが、雨脚が強まってきた。またの機会と諦める。
ザ・ヘアー The Hare
お腹も空いた。B&Bに戻ってから出直しは雨の中であるし辛い。昨夜のザ・ヘアーがリーズナブルで美味しかった。再訪しよう。
心配なのはウィークエンドだから満席かもしれないということだ。兎も角行ってみるしかない。
昨日とほぼ同じ19時15分に着いた。幸いパーキングもスムーズに行った。昨日と同じ席が空いている。
リクエストして同じ席に着いた。
今日はガッツリ肉料理のメインを1つずつオーダーする。
・ 10oz rump steak with horseradish and watercress butter, wild mushrooms, grilled tomato and chips と
・ Cumberland sausages with buttered mash, cabbage and onion gravy だ。
1オンスは28.35g、280gの肉にこのチップスは一人前の量ではない。この太いソーセージ3本とマッシュポテトも一人前の量ではない。
それでも、かなり善戦して美味しくそこそこまでいただいた。
これにワイン1本にチップを含めて£50と超リーズナブルだ。
ダーンハースト・ハウスに戻るとマイケルが「アイスキューブが要るか?」と聞いてくる。昨日とは別のアイスペールが用意されていて、
「これなら大丈夫」と渡してくれる。嬉しいサービスだ。
シャワーを浴び、明日のスケジュールの点検やポストカードをしたため就寝。
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