第２１日　７月６日（水） 水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。
今日の行程　　 Broadford --- Eilean Donan Castle --- Inverewe Garden --- Ullapool --- Dunrobin Castle --- North Kessock
今日の走行距離　　　445ｋｍ　　　今日の万歩計　　6,908歩

Isle of Skye
今日はこの旅一番の大移動の日だ。予定距離４５０ｋｍ、それもＭ道路（高速道路）なしでである。 The AAのRoute Plannerでは予定時間１２時間弱と示されたが、良く検討すると大幅に短縮できるはずだ。 今日は結婚記念日であり、良いレストランを紹介してもらいディナーを楽しみたい。Ullapoolまで予定のコースで行って、 時間的に苦しいようならスクランブルのショートカット・コースでInvernessに入ることにしよう。
昨夜も激しく天窓を打つ音がしたが、幸いにして朝はラブリーな青空が見られる。今日もおいしく朝食をいただき、 先を急ぐというのに妻はKathieと孫の写真を見せ合ったりしてお喋りに興じている。その間に荷物を積み込み準備ＯＫ。 犬の散歩から帰ったTonyと握手でサヨナラし出発。
海岸に絵に描いたような白い家が見える。山と海と牧場、おとぎ話の世界だ。Skye Bridgeはこれまた素晴らしい眺望だ。 停車して写真を撮りたくなるがそこはじっと我慢。橋の終わり辺りに１台の車が路肩に駐車している。 同じ思いの輩が橋の真ん中まで写真撮影に引き返したようだ。

Eilean Donan Castle
最初の訪問地はEilean Donan Castleだ。Loch Duich、 Loch Long、Loch Alshの重なり合う辺りの小島に立つ中世の城だ。潮が引いて海草が顔を出しているが湖に写る古城は ロマンティックだ。島に繋がる唯一の石橋の先の門からドレスのお姫様が出てきそうな雰囲気だ。オープンは１０時からだ。 ここにはガーデン情報はない。先を急ぐ。

Highland Drive
Ａ８９０を北上する。Skyeとは趣の異なる眺望だ。数々の湖を右に左に眺め、あるいは１０００ｍ足らずの緩やかな山の谷間の 森林地帯を進む。この辺りはSingle File Roadである。前にのろのろ運転の車がいると追い抜きもままならない。 のんびり追随していた時のこと、突然空気を振るわせる爆音がしたと思うと、正に目の高さ、手の届きそうなところを黒い物体が 通り過ぎた。Loch Dughaillの湖面すれすれをかすめて去る戦闘機だ。不気味な感じがしてしばらくは心臓が高鳴っていた。
Ａ８３２で西進するとLoch Mareeに出る。大きな湖で視界がぐんと広がって明るく開放的な眺望となる。美しい。 山肌の緑のグラデーション、空の青のグラデーション、湖の水色のグラデーション、雲の白のグラデーション。朝日に輝き 色の見本市だ。
この辺りの道路にはグリッドはあるが道路との間に柵はない。馬もヒツジも先住者優先とばかりに我が物顔で横断する。

Inverewe Garden
Inverewe Gardenはナショナル・ トラスト管理のガーデンだ。Loch Eweの入り江の奥まった穏やかな湖に面した斜面に造られている。この高い緯度にありながら 暖流のお蔭で亜熱帯の植物も育つという。人気のガーデンらしい。
お天気にも恵まれ強い陽射しの中、トロピカルな色合いの花々が伸びやかに咲き誇っている。

中でもバラのコーナーは圧巻だ。なだらかな芝の斜面に幾筋もロープが張られ、そこをクライミングするバラ。その足元には 夥しい種類の大輪のバラが芳香を発している。登ったり降りたり、疲れることを知らずに何度も繰り返し楽しむ。 周囲の木々も伸びやかに枝を広げている。去りがたいガーデンだ。

Highland Drive
再びHighland Drive開始。この辺りはWester Rossと呼ばれNational Parkに準ずるNational Scenic Area(NSAs)という保護地域だ。 NSAsの中でも最も美しいといわれる地域だ。
Loch Eweの船着場も可愛らしく穏やかだ。水の青、空の青共に抜けるほど美しい。
Little Loch Broomを臨む高台の路肩に駐車スペースがあり、望遠鏡が何台も並んでいる。ワゴン車の屋根に望遠鏡を取り付けて いる人もいる。好奇心をくすぐられ停車する。恰幅の良い老夫婦がそれぞれ双眼鏡を首に下げ、折りたたみ椅子に掛けている。 この望遠鏡で何を見ているのかと訊ねると、Nothing!とおどける。狙いはシーイーグル（Sea Eagle=ウミワシ）だと言う。 覗いて良いかと聞くと、覗いても今は見えないと言う。何時見られるのか聞くと、シーイーグルは羽を広げると３ｍにもなる 大物で滅多に姿を見せない。今日は朝２回姿を見せただけだと言う。。既に１３時過ぎだ。日がな一日、この青い空と海を眺め、 時間の流れを楽しむのだろう。私には出来ない芸だ。また現れるよう祈ってサヨナラする。

Ullapool
Ａ８３５に入り北上。Loch Broomの手前で目を奪われる光景に出合う（写真右）。湖に注ぐRiver Broomがキラキラ光って見える。 豊かな森と牧草地が広がる。思わずため息が漏れる。
この地域の中心の街Ullapoolに着いた。港町だ。フェリーも出入りすれば、観光船も出て行く。レジャーボートも浮かんでいる。 桟橋や堤防には観光客が大勢行き来し、昼時でもあり、座り込んでフィッシュアンドチップスなどを食べている。 行程は順調に進んでいる。予定通りにこなせそうだ。私達もスカンピアンドチップスとコーヒーで堤防に座りランチとする。 すかさずカモメの親子がやって来ておねだりする。

Highland Drive
Ullapoolを発ちHighland Driveは続く。これから東海岸までスコットランドの横断だ。
Ullapoolから先Ａ８３５はAssynt CoigachというNSAsの縁を走る。LedmoreからＡ８３７を西に進む。 ここがこの旅の最北地になる。北緯５７度位だろう。我が人生の最北地記録更新だ。（もう２０年も前になるがロンドンから モスクワ経由で帰国したことがある。給油のため寄航したのがこれまでの最北地だ。）この辺り左手に形の良い山が見える。 SUILVENだと思うが定かではない。
RosehallのＡ８３９への分岐にケルト十字が立っている。スコットランドだ。道路の脇にアザミを見つけた。 スコットランドの国花だ。

Dunrobin Castle
Ullanpoolをたって１時間半ようやく東海岸にある Dunrobin Castleに到着。 スコットランドで最も壮麗な城との情報だが、駐車場側正面からの姿は２つの塔が何だかおどろおどろしい感じがする。
例により室内はパスして城の裏に出てビックリ、素晴らしいガーデンが眼下に広がる。一つは円形の、もう１つは長方形の フランス式フォーマル・ガーデンの緑が目にも鮮やかに映る。

フォーマル・ガーデンを目指し階段を下り、坂を下り振り返ってビックリ。お城の表情が違って見える。 丸い塔にとんがり屋根が可愛らしくディズニーの城を思い起こさせる。ガーデンから見上げる城はエレガントな姿だ。 外壁の装飾も美しく、赤みを帯びた白い石と、とんがり屋根の緑青の色合いが見事な調和を見せる。
北ハイランドの名門サザーランド(Sutherland)家の居城で１３世紀から受け継がれてきているという。部屋数なんと１８９室とは 驚愕だ。室内も豪華絢爛らしい。

フォーマル・ガーデンの周りはスケールの大きなボーダー・ガーデンが廻らされている。この北ハイランドでこの緑に驚く。 そして、花の色遣いが優しく趣味に合う。門扉も優雅なフランス風だ。その昔フランス人の奥方のために城をフランス式に 改造したという。

城は海に続く急な斜面に立っており、高低差を上手く利用したガーデンだ。階段やスロープも端麗さに一役買っている。
所々にビビッドな配色も施されアクセントになっている。バラも多くはないが美しい花と香りを楽しませてくれる。

庭の一角に博物館があった。玄関脇の車の運転席でパイプをくわえた紳士が本を読んでいる。目が合うと楽しんでくださいと言う。 入ってこれまたビックリ。動物の剥製がズラリと並んでいる。ざっとメモしてみた。ゾウ、キリン、シカ（各種）、ウシ（各種）、 ワニ（各種）、アルマジロ、サイ、ウサギ（各種）、イタチ、スカンク、ヤマネコ、オオカミ、キツネ、ヘビ（各種）、 クジラ、サーモン、フグ、アンコウ、イルカ、あざらし、オットセイ、貝殻（各種）、鳥類とその卵（各種）、植物の種（各種）、 人の骨格・頭蓋骨など陸・海・空のありとあらゆる動物を並べてある。圧巻だ。
他には土器や石が並んでいる。考古学的に貴重なものなのだろうが説明文が理解できない。
出ると玄関脇では紳士が相変わらず読書をしている。楽しみましたかと声を掛けてくれる。ひょっとすると御当主かもしれない。
ショップで買い物を楽しみ、良く整備されたＡ９を一路Invernessを目指す。途中Alnessの Delemore Distillery に心惹かれるが蒸留所巡りは明日のお楽しみだ。

A wedding anniversary
Ｂ＆ＢでAramintaとGavinの温かい歓迎を受ける。今日は結婚記念日なので良いレストランを紹介して欲しいと言うと、 Aramintaが自信たっぷりに紹介してくれたレストランが Glenmoriston Town House Hotelだ。あのネス湖から注ぐネス川の畔、 閑静な場所にある。（店を見つけるのに少々迷う。婦人警官を見つけ教えてもらう。）
少し格式ばった雰囲気の中、席に案内される。先客の目が一斉に注がれているように感じ緊張。黒いスーツの女性の気さくな応対に リラックスする。結婚記念日のディナーである旨伝え、コース料理と食前酒にシャンパンをオーダー。

妻に感謝を捧げ３６回目の記念日に乾杯。小さな前菜から始まりチーズまで６皿、素材・味・盛り付け全てに満足、ワインも進む。 デザートの皿には"Happy Anniversary"の文字が入り、ローソクが点されている。チーズと葡萄の相性の良さを初めて知った。
食後はようやく暮れなずむネス川畔を散策する。川面から何かが出てきそうな雰囲気だ。

Ｂ＆Ｂに戻ると長男夫妻からお祝いのＥメールが届いていた。嬉しいことだ。Aramintaからも祝福をいただく。 TaliskerとSherryであらためて乾杯、この幸せを噛みしめる。

”Ｔｏｐｉｃ”　National Park & National Scenic Area　　　Topic一覧はこちらへどうぞ
イギリスには国立公園(National Park)が１５ヶ所ある。それに準ずるものとしてイングランドとウェールズにおいては "Areas of Outstanding Natural Beauty" AONBsが４１ヶ所あり、スコットランドでは"National Scenic Areas"が４０ヶ所ある。
National Parkを指定年度順に一覧表した。 訪問先は斜体文字で示した。結構行ってるものだ。但し、New ForestとSouth Downsは指定以前の訪問だが…。 いずれも開発と保護がマッチした国民のための公園だと感じる。
○数字と右の地図の番号で位置を確認できます。

1st	1951	Peak District　　　�F	9th	1956	Northumberland　　　�B
2nd	1951	Lake District　　　�C	10th	1957	Brecon Beacons　　　�I
3rd	1951	Snowdonia　　　�G	11th	1989	The Broads　　　�N
4th	1951	Dartmoor　　　�K	12th	2002	Loch Lomond & The Trossachs　　　�A
5th	1952	Pembrokeshire Coast　　　�H	13th	2003	Cairngorms　　　�@
6th	1952	North York Moors　　　�E	14th	2004	New Forest　　　�L
7th	1954	Yorkshire Dales　　　�D	15th	2005	South Downs　　　�M
8th	1954	Exmoor　　　�J

スコトランドのNational Parkは、既にその一部を楽しんできたLoch Lomond & The Trossachsと今回は訪問できない Cairngormsの２ヶ所だ。手付かずの広大な自然の残るスコトランドにしては少ない。
それをカバーするのが National Scenic Area(NSAs)だ。 大小様々４０ヶ所あり、その指定目的も色々あるようだ。National Parkと違ってほとんどが未開の地だ。だからエリアの 辺縁を巡りその自然を享受するか、自らの足で踏み入るしかないがその道さえ少ないようだ。
この旅で私達がドライブしたNSAsは１１ヶ所になった。順にEildon and Leaderfoot、 Upper Tweeddale、Ben Nevis and Glen Coe、 Loch Shiel、Morar, Moidart and Ardnamurchan、 The Cuillin Hills、Trotternish、 Kintail、Wester Ross、 Assynt Coigach、Dornoch Firthだ。その全てが施設があったのでもなく、 買い物や食事をしたのでもない。ただその自然に抱かれたのみだ。豊かだ。

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